『裏酒場ひとり語り ~忘れ歌~』

聞いたことはあるのだけれど、思い出せない。もう、そこまで出かかっているのに、思い出せない。

今夜も、気にかかって、まだまだ眠れそうにない。まだ、眠る時間には、早すぎるけれど。
誰もいない今だから、思い出したいのに。
カウンターには、グラスがひとつ。今夜、二杯目のハイボールだ。もっと、飲める、いや、飲んでしまう。
今夜は、そんな夜だ。

あの歌は、私の心の中を、今夜も彷徨っている。早く、思い出してやらなければ。

『すっかり、秋だね』
入ってきた彼の笑顔で、私は、思い出しの心の彷徨いを中断する。忘れて欲しいと歌は、思ってるのかもしれない。

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