報告 2018年09月25日(火)07:19 会員以外にも公開 『裏酒場ひとり語り ~想い紅~』 音楽酒場即興話 もうあと少ししかない口紅を、捨てきれないでいる。いつ買ったかも、とうに忘れてしまっている。だけど、捨てることができない。華やかな色ではない。くすんでるわけでもない。忘れられない不思議な赤、私は、そう呼んでいる。月に魅せられて、今夜は、すーっと紅筆に、その赤を滲ませる。想い出のページを、そっと開いてみようか。『そのルージュ、いいねえ』入ってくるなり彼は、言った。軽く笑って、私は、カウンターの隅に立っている赤を見つめた。 カテゴリ:アート・文化