二宮陸雄 の 医者と侍

★3.5 文化4(1807)年の「津軽藩士殉難事件」を題材に藩の苦難を描く。

餓死者10万人以上で他領への逃散を含めると全人口の半数を失った天明の大飢饉から立ち直りつつある津軽藩に新たな試練が課せられた。蝦夷地警備の命である。

物語は若き藩医・村井慎之介が浮腫により次々と死にゆく者たちを前に、原因を探るべく阿蘭陀医師ヘイステルの医学書を読み解いていく。着目したのは航海途中に起きるという壊血病(ビタミンC不足)だった。次第に体が弱り、手足の皮下に血の斑が出て、歯茎が血で腫れ、足がむくんで、最後は死に至る。

10万石への加増を期待する藩上層部はこの事件