「血脈下」佐藤愛子著を読む

「血脈(下)」 佐藤愛子著 文芸春秋 
平成13年3月10日発行
ー愛子には欲望に負ける人間を軽蔑する厳しさがある。
その愛子の冷たさと厳しさを見ると、シナは若い頃の自分を見るような思いがする。ただひとつ違うことはシナは優柔不断だったが、愛子は果敢どということだ。父に溺愛されて育った者の怖いもの知らずが、女らしい弱さを吹き飛ばしていた。
先が心配だからといって何もしないでいるよりは、たとえ何が待っていようと前へ進んだ方がいいのだ。
 20の年まで十分過ぎることをして育ててやったのだ。これからは自分一人の力で生きて行けばいい、とシナは思う。
 森田悟の