匣に住む予言者

 今村昌弘の「魔眼の匣の殺人」を読了した。著者は「屍人荘の殺人」で第27回鮎川哲也賞を受賞して作家デビューしたミステリー作家である。本書はミステリー・ランキングを席巻した「屍人荘の殺人」の続編で、予言者の予言を裏書きするように起こったクローズド・サークル殺人事件を描いたミステリーである。なお、本書の登場人物で前作と共通するのは、名探偵役の剣崎比留子と、語り手でワトソン役の葉村譲のみである。なお、本書では詳述されていないが、比留子は災いを招き寄せる特異体質であり、そのために大富豪らしい実家とは絶縁状態である。彼女が推理を行うのは、探偵としてではなく、災いが