貧乏神と七福神

 浅田次郎の「大名倒産 (上、下)」を読了した。著者は直木賞作家であるが、自衛隊入隊や一時期企業舎弟をしていた等、ユニークな経歴の持ち主である。作風は広く、極道小説、時代小説、中国歴史小説、現代小説など多岐に渡っており、「小説の大衆食堂」を自称している。本書は、積もりに積もった借金の返済に疲れ、大名家倒産を図る先代と、それを防ごうとする当代大名の苦労を描いた、一種の人情時代小説である。
 越後の丹生山松平家第十三代松平和泉守信房(小四郎)は、先代の嫡子であった長兄が急死したため、算え二十一歳で家督を継いだばかりである。小四郎は先代が江戸下屋敷で村娘のなつ