本郷和人「武士とはなにか 中世の王権を読み解く」

 著者の本郷先生は東大教授であるが、日経に歴史コラムを連載していた時期があり、面白かったので本書を手にした。本郷先生はアカデミックの世界に閉じこもることなく、歴史の面白さを伝えようと積極的に活動されている。本書もその活動の一環である。冒頭、中世に国家は存在したのかについて議論があり、権門体制論と東国国家論が論じられている。鎌倉幕府以降、武士が政治の中心を担う歴史が叙述されるが、権門体制論は天皇を中心とする朝廷、武士、寺社勢力などの権門が互いに競合、相互補完しながら国家体制を構築していたとする考え方である。

 一方、東国国家論とは西の朝廷に対して、鎌倉幕