良質なロードムービーを観た思い「少年と犬」(馳星周・直木賞受賞作品)

馳さんの作品は「不夜城」以来だ。新宿歌舞伎町に漂う(饐えた)臭いを感じる中々の力作であった。但し、本作品にもイリーガルに生きる様々な人々が入れ代わり立ち代わり出てはくるが、作風はまったく違う。

  1匹の犬が、目的の地に辿り着く間に様々な人々に出会う物語である。犬の気持ちに全く踏み込むことはしないが、明らかに読む者は、その犬の持つ意志を感じる。行間に漂う気配・・・、これこそがこの小説のキモである。見事だ。

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