五木寛之 の 青春の門(第一部)筑豊篇

★3.7 どこかで山崎ハコの「織江の唄」を聞いた、それで再読する気になったか、作者が最近書いた続編も気になっている。

伊吹信介は昭和10年、北九州の田川で生まれた。父の重蔵は川筋気質の炭鉱夫仲間から〈あばれ蜘蛛〉とか〈のぼり蜘蛛の重〉と呼ばれ一目置かれていた。 信介の母は幼い時に死んで記憶にはなく、信介を育ててくれたのは後妻のタエである。重蔵がカフェの女給をやっていた森島タエに惚れ、やくざの塙竜五郎から分捕った。だが信介が5歳の夏、その重蔵も死んだ。落盤で水に沈みそうな人夫を救うため、塙竜五郎にあとを託し、己の命と引き換えにダイナマイトを使って彼らを救