青木美智男「小林一茶 時代を詠んだ俳諧師」

 小林一茶は代表的な俳諧師として歴史で学習するが、実は正岡子規に再発見されるまで一時は歴史に埋もれた存在であったらしい。もちろん、一茶の存命の時代でも、俳人仲間の間では全国に知られる存在であった。実際、一茶は巡回俳諧師として生き、農耕や商売などの本業を持たなかった。いわゆる遊民だが、言葉と現実には大きな落差がある。いくら門人を訪ねて行ったとしても必ず食事を施してくれるとは限らない。ましてや宿泊させてもらうことも多くはなかったであろう。3度の食事が摂れれば何とあり難いことかと感謝し、廃寺でも雨露が凌げれば良い方。なぜそこまでして漂泊するのか。

 松尾芭蕉