藤井素介 の 雲さわぐ―天草の代官・鈴木重成

★3.7 「島原復興に尽力した代官・鈴木重成」という新聞記事(日経2019.12.18)が気になっていた人物。天草富岡城址には鈴木兄弟の銅像もあるようだ。「島原天草の乱」の後、天領となった天草の幕府初代代官・鈴木重成を描く。天草の島内に35ケ所もの祠が今も受け継がれている〈鈴木さま〉である。

物語は不穏な動きをする吉利支丹信徒を捕縛する意外な話で始まる。悟りきった賢者の姿を見せられるよりははるかに小説としての面白味を感じる。そんな重成に各地を流浪してきた僧・貧留はいう。「燻し落とされた蚊のように無力になった隠れ吉利支丹に何ができましょう。百姓のいないこ