無能の人

 朝井まかての「類-Louis-」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、森鷗外の「不肖の子」と終生言われ続けた、三男の森類の生涯を描いた伝記的小説である。なお、森鷗外には、先妻の登志子と間に生まれた長男の森於菟、後妻の志げとの間に生まれた長女の森茉莉、次女の小堀杏奴、夭折した次男の不律、と類の五人の子供がいるが、それぞれオットー、マリ、アンヌ、フリッツ、ルイという、西洋風の名前から名付けられている。
 類は明治四十四年(1911年)に森鷗外の三男として生まれるが、その時父親の鷗外は五十歳前であり、最晩年の子