ひとつ話してみよう ~双子グラス~

他人なんだけど、なんか、似てるってこと、ある。 兄弟じゃないけど、他人に思えないやつも、たまに、いる。
教会が多いこの町に住んで、俺も、ずいぶん長くなったけど、あいつは、女だけど、弟って感じだった。
それも、ずっと昔、昔のことだ。
教会の鐘の音が聞こえる坂道を上りあがったところに、あいつのカウンターだけの店があった。 そう、もう、今はない。
『待ってたよ』
そう言って、いつものグラスを、出してくれた。
『今日は、何?』
『麦を、ロックで』
『じゃあ、あたしも」
あいつと俺の双子グラスは、夜明けまで続いた。
何を話したかなんて、覚えてはいない、ただ、やはり