耶律楚材の臣従

 北方謙三の「チンギス紀 (十二) 不羈」を読了した。著者はハードボイルド出身の作家であるが、先年完結した大水滸シリーズ等、最近は中国史を題材とした歴史小説が多い。本書は、ユーラシア大陸に拡がる大帝国の礎を築いた英雄チンギス・カンの人生を描いた物語の第十二巻であり、金国に侵攻して燕京を陥落させ、女真族の故地を支配するに至ったチンギス・カンの姿が描かれる。
 ダイルとチンカイは、モンゴル族の西方への橋頭保として築城された鎮海城守備のために、城の周りに三つの砦を築く。三つの砦の守備弊は、スブタイが派遣した一千騎の騎馬隊を含めて三千である。チンギス・カンは十万