最強の楯と矛

 今村翔吾の「塞王の楯」を読了した。著者は時代小説作家であり、2022年に「塞王の楯」で第166回直木三十五賞を受賞している。本書は直木賞受賞作で、関ケ原の合戦を前にして、城の攻防に死力を尽くす職人達の姿を描いた時代小説である。
 本書の主人公は、石垣造りを天職とする穴太衆飛田屋副頭の飛田匡介である。匡介は越前一乗谷の生まれであるが、一乗谷城の浅倉義景は織田信長に滅ぼされる。一乗谷城の落城の際に、匡介の両親と妹の花代は織田勢に殺害されるが、匡介はその時一乗谷城の石垣造りの下見に訪れていた、飛田屋の頭の飛田源斎に救われる。源斎は石垣造りの名人であり、穴太衆