夏ばなし ~それなら~

風が吹いても、少しも涼しくない、いつもの昼下がりである。空が青いけど、なんか素敵な夏って感じじゃないんだよね。

もう、今となっては、いいのかもしれない。二十年近くになるんだから。
毎日通って、看板までいた、あの駅裏のスナック。まだあるのは知ってるけど、あれっきり行ってない。
蒸し暑いあの夜、私は、言ったのだ。
『それなら、消えたら』
すべてが嫌になったという、ママに向かって、そう言ったのだ。
怖い目で、私を見た、ママの顔が忘れられない。
風のうわさでは、あれから、一週間、ママは、行方不明だったらしい。
やっぱり、ほんとに、消えてみたのだ。で、店は、ちゃ