「ピーポーピーポー」
救急車の音なんて毎日聞いている。気にも留めなかった。だんだん大きくなる。救急車?ここに?
私達は百名山の一つ「大菩薩嶺」への登山口「上日川峠」に着いたところだった。
「来たよ!見に行く」
私は急いでリュックを背負った。こんな事で息子は動じない。
「登ってくよ、ほら見て!」
救急車は登山道に併走している車も通れる道をゆっくり登り始めた。こんな深い山には不似合いな赤色灯を光らせ、けたたましい警笛を鳴らしながら。ここは確か1600メートルはある。
はしゃいでいた。着く直前にあの姿を見てしまった。
「停め