辻堂 魁 の「雇足軽 八州御用」

雇足軽とあるから主人公は竹本長吉(おさきち)に違いないのだが、その出番は最初と最後に詳述される特殊な文体。途中は関東取締出役(とりしまりしゅつやく)の蕪木鉄之助の三人称表現が主体であり、長吉の心情描写はない。

八州様と蕪木家の小者・六兵衛、雇足軽の竹本長吉と多田次治、道案内の2人の一手6名がセットで行動するが、これは佐藤雅美版とは大きく異なる。道案内は地理に明るい百姓で次の土地で替わり捕物にも加わらない。十手は4人が持ち、刀は八州と雇足軽のみで、小者は木刀と十手。捕物は、寄村手配の目明し番太が手下を率いて参加する。雇足軽は手当てが1日銀1匁(およそ