「辻堂 魁」の日記一覧

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辻堂 魁 の「うつ蝉 風の市兵衛 弐」

★3.3 第弐部13作目。文政9年の春、市兵衛42歳である。 今回は財政観念に欠ける家禄3千石の岩倉家がらみの話。岩倉家の当主則常は職禄4千石の小姓番頭をつとめる家柄。その嫡男である高和にあの「残照の剣」以来の村山早菜が嫁ぐことになった。早菜の後見である両替商の近江屋は岩倉家の財政逼迫を知らなかった。格の違う婚姻を認めた岩倉家の狙いは近江屋から金を引き出すことである。 目付筆頭の片岡信正は岩…

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辻堂 魁 の「雇足軽 八州御用」

雇足軽とあるから主人公は竹本長吉(おさきち)に違いないのだが、その出番は最初と最後に詳述される特殊な文体。途中は関東取締出役(とりしまりしゅつやく)の蕪木鉄之助の三人称表現が主体であり、長吉の心情描写はない。 八州様と蕪木家の小者・六兵衛、雇足軽の竹本長吉と多田次治、道案内の2人の一手6名がセットで行動するが、これは佐藤雅美版とは大きく異なる。道案内は地理に明るい百姓で次の土地で替わり捕物…

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辻堂 魁 の 「母子草 風の市兵衛 弐」

第弐部12作目。時代は文政9年(1826年)となり、市兵衛と矢藤太に人探しの依頼がきた。日本橋の永代通りの酒問屋、摂津屋の主、里右衛門は59歳、大病を患ったことをきっかけとして、若かりし頃に縁のあった女、3人と心の決着をつけたいと思うようになった。3人を探し出し、それぞれに100両ずつを渡すことと、突然姿を消してしまった理由を聞くことである。42年前に摂津屋に奉公に来たお高、33年前に女掏摸から…

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辻堂 魁 の 「乱菊 介錯人別所龍玄始末4」

★3.5 シリーズ4作目、4つの連作。龍玄23歳、妻の百合28歳、娘の杏子(あんず)は3歳である。 「両国大橋」 南部藩の国許から、江戸に駆落ちした妻の紀代と中間の幸兵衛。養子をとり女敵討ちの許しを得て江戸へ出た深田匡はそれを果たすが、幸兵衛が仕える大目付を出す大身旗本から横槍が入り、南部藩は病死とすることにした。自裁を求めたのである。 「鉄火と傅役」 5800石の旗本の嫡男の傅役を…

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辻堂 魁 の 春風譜 風の市兵衛 弐

★3.3 第弐部11作目。前には川越に出かけたが、今回は近場の水戸街道が舞台。 扇職人の父親から、小春の嫁入りの話を聞かされた又造は、我孫子の親戚の若者、南吉を頼って出奔してしまった。大坂から連れ帰り、将来は又造の嫁にもと考えていた小春の心はすっかり渋井の良一郎のもの。 利根川と交わる水戸街道付近の宿場は荷の継立に絡む問題が発生していた。銚子からの急ぐ荷をここから陸路で松戸まで運びそ…

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辻堂 魁 の 斬雪 風の市兵衛 弐

★3.3 第弐部10作目。 文政8年末、市兵衛41歳のまま。前作の越後津坂藩のお家騒動の続き。藩主の鴇江(ときえ)伯耆守は国許で、戸田浅右衛門が江戸家老に任じられ出府してきた。 その戸田が市兵衛に旧友の田津民部の探索を依頼してきた。江戸屋敷の勘定方であった田津は5月、150両を着服し欠け落ちしたとされていた。市兵衛は数少ない情報から田津の足取りを追う。 一方、北町の鬼渋は海から逆流した遺体と…