麻宮 好 の「月のうらがわ」

★3.5 深川の仙台堀沿いの伊勢崎町、その海辺橋に近い所にある裏店が新兵衛店である。物語はここに住む重いものを抱えた5つの家族の1年間。

主人公は13歳のお綾、大工の35歳の父、直次郎と7歳の弟、正太、母の絹は3年前に病で亡くなった。薬代の借金の支払いが今も続いていて、お綾の気苦労も。

路地の出口に差配の新兵衛と出戻りの孫、お美代24歳が住む。離縁となった理由のよからぬ噂も聞こえてくる。同じ長屋の重蔵は直次郎の仲間の大工だったが、普請場の2階から落ちて右手が麻痺し、仕事ができない。女房のおなつも働きに出たが月300文の店賃も払えない。娘の7歳