圧倒的なごちそう。

中学生の時、夜勤で不在の母に代わり、父が私の
弁当を作ってくれたことがある。

新部員歓迎サイクリングに行くことになったからだ。
朝、起きると既にできていた。

新聞紙と風呂敷に包んであった弁当箱らしきものが
テーブルにふたつ。
二段重ねだった。

おおいに期待が膨らんだ。
チラと見ただけで力作と分かったから。

気恥ずかしかったけど私には珍しく面と向かって
「ありがと」と言った。

「俺の好物を入れたまでだ」

いつもと変わらぬ ぶっきらぼう な父の返事…。
おまけに ぷい と横を向いた。

アップダウンの激しい片道10キロの行程はきつかった。
背中の