連載:シニア

「生き続ける怖さ」

私は怖くて仕方なった。

癌宣告を受けた時とは違う。あの時、自分が死ぬかもしれないと泣いたが、同時に「今は死ねない」と強い気持ちが込み上げた。

介護施設にいる70代半ばのA子さんにショックを受けたのは死ぬ恐怖じゃない、回復する怖さ、生き続ける怖さみたいなものだ。

A子さんは盛んに施設側を批判している感じだった。テレビもないのよ、お風呂も入れないの、と。

私は「入居した時はどんな生活をしていたんですか」と聞いた。施設の名前も聞いた。老健だ。

「老健は介護を受けながらリハビリをして在宅復帰を目指す施設である一方、特養は介護を受けながら長く生活する施設