シベリアの異邦人~完結編~後編(戦後編)
戦後編 ヨアンナとアダムの住む ささやかなアパートの一室に 赤軍兵の一団が踏み込もうとした少し前、 ヨアンナはフィリプの死を知らされず 普段と変わらぬ日常を過ごしていた。 この日も青年会つながりで いつも世話を焼きに来る近所の女性が たまたま来ていた。 その手伝いの女性が休憩中、 わんぱく息子のアダムが蜂に刺されて 火がついたように泣き叫んだ。 アパートの裏手の狭い所で、…
戦後編 ヨアンナとアダムの住む ささやかなアパートの一室に 赤軍兵の一団が踏み込もうとした少し前、 ヨアンナはフィリプの死を知らされず 普段と変わらぬ日常を過ごしていた。 この日も青年会つながりで いつも世話を焼きに来る近所の女性が たまたま来ていた。 その手伝いの女性が休憩中、 わんぱく息子のアダムが蜂に刺されて 火がついたように泣き叫んだ。 アパートの裏手の狭い所で、…
前編 蜂起編でのヨアンナの結婚後の描写と その後の世界を付け加えると共に、 死後の異なる世界も合わせて本編で加筆したい。 ワルシャワゲットー蜂起鎮圧から ふさぎ込むヨアンナが、 再び快活さを取り戻すべく通い詰めたフィリプが、 彼女の心を掴み、 愛を獲得することに成功したのが、 1943年7月初めの頃だった。 巷ではまだゲットー蜂起の 逃亡ユダヤ人狩りが終息しておらず…
ワルシャワゲットー蜂起 その頃のワルシャワはドイツ軍による支配の中、 混沌と劇的な変革の渦中にあった。 その一番の主人公はワルシャワ在住のユダヤ人の存在だった。 ドイツ軍のポーランド侵攻直前当時、 ワルシャワにはユダヤ人が37万5000人いた。 実に市内人口の30%を占め、 アメリカニューヨークに次ぐ多さだった。 ワルシャワ占領直後から、 ユダヤ人封じ込めの政策が検討さ…
前編 1926年、8月27日、ポーランド軍テストパイロットである ボレスワフ・オルリンスキ大佐は メカニックのフィリプ・クビャク軍曹とともに ワルシャワから東京間10,300kmを飛行するため、 晴天の中、一路東へと旅経った。 これはヨーロッパ人の日本への初飛行であった。 一行はモスクワ、ハルビン等を経由しながら 九月5日に日本の所沢飛行場に到着し、 多くの日…
ここにひとりの重要人物がいる。 彼の名はイエジ・ストシャウコフスキ。自ら孤児出身でありながら、 孤児院で働きワルシャワ大学を卒業。 孤児教育の道へと志した。そして17歳の時、シベリア孤児の組織を作ることを提唱。 ポーランドと日本の親睦を図ることを目的に「極東青年会」を結成し、自ら会長になった。 最盛期には640名にも上ったという。 その後成長した孤児たちは日本との絆絶ち難く、日本公使館との交…
2019-08-18 史実を参考に創作したフィクション 本作品は私が別のブログにアップしたものを再度アップしてみました。 全三部作で構成されていますが、一回にアップできる文字数の関係上、それぞれを再度前編、後編等に再分割していますのでご了承ください。 前編 今からおよそ100年前、シベリアは地獄だった。 その主人公たちはポーランド人。何故そ…