藤井邦夫 の 狐の嫁入り-新・知らぬが半兵衛手控帖(6)

★3.3  新シリーズ6作目。例によって4つの連作短編。

「狐の嫁入り」では溜池に狐火が現れた。昔から転々と点滅する火を狐火と呼び、その列を嫁入り行列に例えた。珍しく赤坂田町の薬種問屋が舞台、捕り物帳には滅多に登場しない地域だが溜池という特殊な場所が必要だったのか。薬種問屋の倅が嫁を伴って帰ってきたが嫁の様子がしっくりこないという話。

「半人前」では弥平次の手下の由松が「角手」という捕り物道具を使う。あの久蔵家の太市の使うやつだ。指輪型の鍛鉄製で3本の鋭い爪が付いており、相手の腕などをつかみ拘束するもの。その昔のくノ一の武器とされる。

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