「藤井邦夫」の日記一覧

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藤井邦夫 の 流人船 新・秋山久蔵御用控(十八)

★3.3 新シリーズ18作目。 「由松命」はしゃぼん玉売りの由松の幼い頃が絡む物語。 茅町の料理屋・若柳の通いの仲居・おすみが帰路に襲われ殺された。おすみの左の二の腕には由松命という古い刺青があった。だが、仏の顔を拝んだ由松には心当たりはない。おすみの過去を調べていくうちに、深川仲町の岡場所・松葉屋にいたことが分かった。子供の頃に女郎屋に年季奉公に出されこき使われた後、女郎にされて生きてきた女…

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藤井邦夫 の 守り神-新・知らぬが半兵衛手控帖(20)

★3.3   新シリーズ20作目。 「首十両」はこのところ毎回登場する〈隙間風の五郎八〉の危機。 廻り髪結の房吉から「五郎八の首は10両、居場所は5両」という裏渡世へ触れが回っていると聞いた半兵衛は、何とか助けてやろうとする。当然ながら、鳥越明神裏の小さな塒には帰っていない。 東浅草聖天町の聖天一家の政五郎から出所は薬研堀の百蔵という両国広小路の地回りだと知る。この百蔵が三味線堀の…

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藤井邦夫 の「逃れ者 新・秋山久蔵御用控(十七)」

★3.3 新シリーズ17作目。4編の内1編は大助が絡むのが定着したよう。 「微笑み」では大助が湯島学問所からの帰りに日本橋の高札場で事件が起きた。悲鳴を聞いた大助が見ると羽織を着た男が倒れており、取り巻く人の中から大助にぶつかりそうになって去った粋な形の年増がいた。大助が男に駆け寄ると、脇腹を刺されており、大助は医者を呼んでくれと叫ぶ。 そこへ駆けつけたのが北町の同心、倉本新兵衛と手…

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藤井邦夫 の 「出戻り-新・知らぬが半兵衛手控帖(19)」

★3.3 新シリーズ19作目。 最近は老盗人の「隙間風の五郎八」がよく登場する。「脅し文」では投げ文に書かれた同業の〈夜狐の長次郎〉に関する話。「目利き」では有名な刀剣などの盗みを専門とする盗人探索にからむ。 「出戻り」では半兵衛が助っ人に頼んだ柳橋の弥平次の船頭・勇次が活躍する。犯人の舟による逃走を予期した半兵衛によるもの。 「手遅れ」のテーマは不在証明(アリバイ)を覆す話。殺人…

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藤井邦夫 の 帰り道 新・秋山久蔵御用控(十六)

★3.3 新シリーズ16作目。 「返討ち」では珍しく雲海坊の塒に関わる物語。浅草猿屋町は蔵前通りにある浅草御蔵の手前を鳥越川沿いに進んだところにある。街角の稲荷堂の傍に雲海坊の住む古いお稲荷長屋はある。今回は同じ長屋で雨城楊枝を作る浪人・片平兵庫も登場。2人して同じ長屋で錺職を修行中の若い佐吉を気にかける。 「忠義者」では大助が掏摸騒動に巻き込まれる話。「掏摸だ」の声に、逃げてきた男を投…

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藤井邦夫 の 「お多福-新・知らぬが半兵衛手控帖(18)」

★3.5 新シリーズ18作目。 表紙は夫婦で築いた小間物屋を離縁されたお多福が担ぎ売りをする図。 「大盗賊」はこのところお馴染みになりつつある〈隙間風の五郎八〉が起こした事件がもと。本人が盗みに入った献残屋では50両しか盗まなかったにもかかわらず、献斬屋は千両と古田織部の金継ぎ茶碗を盗まれたと奉行所に申し立てた。 担当はあの定廻りの風間だが、まさか1人だけの犯行とは思わず捜査は難航…

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藤井邦夫 の 介錯人 新・秋山久蔵御用控(十五)

★3.3 新シリーズ15作目。 大助の成長を示すのは「瓜二つ」。これまで、久蔵は大助には事件に全く関わらせなかった。それが今回は、初めて助けを求めに来た女を護るように指示した。もちろん太市もいっしょ。賊が現れると大助は木刀で相手をし、太市は万力鎖を握っている。大助が木刀を打ち込むのだが、賊はそれを躱して逃げてしまう。そういえば、大助の道場の話も、腕前もこれまで触れたことはなかった。久蔵の息子で…

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藤井邦夫 の 律義者-新・知らぬが半兵衛手控帖(17)

★3.3 新シリーズ17作目。 表紙は実質の妻子がありながら、実家の都合で旗本家へ養子に入る男の図。この話、最近どこかで読んだ、結末が読めて残念。 「強請屋」では前作の〈隙間風の五郎八〉また登場して活躍する。北町奉行所前で半兵衛を待っていると、大久保忠左衛門の遊び心で与力部屋へ連れていかれる。 今回は、神楽坂や小日向など今までにない土地が登場する。臨時廻り同心がゆえにテリトリー無し…

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藤井邦夫 の 朴念仁 新・秋山久蔵御用控(十四)

★3.3 新シリーズ14作目で、あれから5年経過したことになる。鳥居耀蔵もそろそろ南町奉行に就任するはずだが、そうなるとこのシリーズもおかしくなるのか。作者は鳥居耀蔵は避けような気がする。 朴念仁の大助も19歳ぐらいか。学問所の帰りに付け文が。いつ、誰が、全く心当たりのない大助だが、文は「助けてくれ」というもの。太市とともに立ち寄ったところを吟味してみるのだが・・・。 学問所の話は出…

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藤井邦夫 の 隙間風-新・知らぬが半兵衛手控帖(16)

★3.3 新シリーズ16作目。表紙は隙間風の五郎八が旗本屋敷に忍び込もうとしている図。 廻り髪結の房吉の話から勘定奉行所の土地払い下げ事件へ繋がる「笑う女」、市中廻りから怪しい男を追い、毒薬による殺害未遂と繋がる「隙間風」、「流れ者」も房吉の話が飾り職人の入札に関わる殺人事件に繋がる話、「走野老(はしりどころ)」は吟味与力の大久保忠左衛門の依頼による乱心事件である。今回、初めて走野老という…

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藤井邦夫 の 雨宿り 新・秋山久蔵御用控(十三)

★3.3 新シリーズ13作目。 4話とも罪を犯した者や、関わった者の最後の始末の付け方が切ない。 「忠義者」では、家臣をむやみと手討ちにする旗本の家臣が、妻も亡くして元の主君に刀を向けて命を落とす。 「人斬り」では、人の殺しを請け負う始末屋の浪人が、久蔵を父親の仇と狙ってくるが、母親は息子を討ってくれと頼み己は尼となる。 「雨宿り」では、盗賊の女頭目は手下に命を奪われてしまうが、雨宿りで庇…

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藤井邦夫 の 埋蔵金-新・知らぬが半兵衛手控帖(15)

★3.3 新シリーズ15作目。 表紙は「埋蔵金」の鳥越明神の前で野菜を売っている老百姓の前に犬が小判を咥えて境内から出てきた場面。横田美砂緒はいろんな文庫の絵を手がけているようだが、このシリーズが一番味がある。 今回は珍しく、廻り髪結の房吉が持ち込んだ話が2つ。「埋蔵金」はその房吉が騒動の様子を面白く話す。だが、「質流れ」は明らかに意図を持って伝えた。質屋の主の妾が消えて、人を雇って探している…

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藤井邦夫 の 凶状持 新・秋山久蔵御用控(十ニ)

★3.3 新シリーズ12作目。 「兇状持」ではしゃぼん玉の話も。葦でしゃぼん玉液を吹くとあるが、液は何だろうか。当時は、ムクロジの果皮や焼いた芋の茎などの自然物が使われていたらしいが。 「守り神」では〈角手〉と〈鼻捻〉という捕物道具が登場した。由松も使う鼻捻に興味がある。もとは棒の先の綱で鼻を捻じり、馬をおとなしくさせる道具だったらしい。今の警棒もこれが元なのだろうか。 「目利き」では、「便…

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藤井邦夫 の 新・知らぬが半兵衛手控帖(14)-天眼通

★3.3 新シリーズ14作目。半兵衛の妻は初産で死に、墓は不忍池の西の祥慶寺にある。妻の顔は死んだ時の若いまま。 今回は2つの趣向。「天眼通」では珍しく14歳の子守の娘が本物の天眼通。あの霊験お初やおいちの様な人の見えぬものが見える能力。どうやって終わるのかと思ったが、熱を出してあっさりとただの娘に。 「小悪党」では奉行所を出て不審な行動をする与力の大久保忠左衛門を半兵衛の一行が尾行する話。…

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藤井邦夫 の 残り香 新・秋山久蔵御用控(十一)

★3.3 新シリーズ11作目。 「残り香」では新八と清吉が佐吉という男を見逃すシーンは珍しい。若い2人の組み合わせて敢えてそうしたか。「小塚原」では尾張藩の若侍と旗本の若者たちの大喧嘩。庶民が巻き込まれ切られるという迷惑。江戸の初期の旗本奴を思わす話。尾張藩の甥っ子の若様には腹を切らせ、旗本の首領格は小塚原で久蔵が斬り捨てる。ちょっとやり過ぎの話ではなかろうか。「出戻り」のように久蔵が逆恨みの対…

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藤井邦夫 の 偽坊主-新・知らぬが半兵衛手控帖(13)

★3.3 新シリーズ13作目、4話。 「偽坊主」悪評高い金貸しの家ばかりを狙って経を読む托鉢坊主。廻国修行中に言い交した娘が金貸しの妾となったのを知った男は、偽坊主となってその娘を探す。最後に見つけた娘は金貸しの命乞いをして・・。男はまた、旅に出るしかなかった。 「三毛猫」未婚の娘が孕んだのを隠すために金で婿を迎えた旗本家。実家の貧窮を救うためとそれを承知で婿に入った男は43歳で出奔した。嫡男…

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藤井邦夫 の 隠れ蓑 新・秋山久蔵御用控(十)

★3.3 新シリーズ10作目。「瓜二つ」はしゃぼん玉売りの由松が敵と間違われて始まる話。「隠れ蓑」は昌平橋で2人の若い武士が3人の浪人に襲われる話。これら2つの話は偶然に頼る展開で、この作者には似合わない。まだそんな年でもないはず。 「卑怯者」はキーになるのが、同心・神崎和馬の御新造・百合江である。秋山家の嫡男・大助や奉公人の太市も活躍。この2人のコンビは将来を予想させ楽しい。 「逃れ者」は…

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藤井邦夫 の 一周忌-新・知らぬが半兵衛手控帖(12)

★3.3 新シリーズ12作目。 「長い一日」は半兵衛に投げ文があった。夜盗に巻き込まれそうな男を助けるため。半兵衛は己を知る娘と断定し、過去の事件を調べ始めた。辿りついた娘は4年前の事件の娘。音次郎もその事件を覚えていた。ということは新シリーズが始まって既に4年が経過しているということか。 「一周忌」は湯島天神で遭遇した喧嘩の3人組の若侍の顛末。「隠密廻り」は珍しく隠密廻りの黒木佑馬が登場。抜…

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藤井邦夫 の 紙風船 新・秋山久蔵御用控(九)

★3.3 新シリーズ9作目。 〈不始末屋〉という珍しい商売、子や孫の不始末をでっち上げ、揉み消してやると身内から大金を騙し取る。オレオレ詐欺に似ている。 〈嘘吐き〉はうそつきと読む。昔はうそ、デマ=汚いものとしたか、吐くがぴったり。 「紙風船」では珍しく、北町が捕えた犯人を、犯人ではないと一膳飯屋に親爺を人質に立てこもる女が、南町に調べ直しを要求する話。こういう直接的な必然性が無い限り、奉行…

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藤井邦夫 の 古傷痕-新・知らぬが半兵衛手控帖(11)

★3.3 シリーズ11作目。 迷子石は時代小説にはよく登場する。日本橋の一石橋南詰の〈満よひ子の志るべ〉と湯島天神の〈奇縁氷人石〉が良く知られているようだ。湯島天神の方は子供に限らず大人も含む人探しの塔で「古傷痕」にも30男の左眉上の傷痕を特徴としていた。 今さらながらに半兵衛の閃きとか勘が物語を面白くしていることに気付く。〈左官職人〉から〈普請場〉が閃いたりと、ちょっと思いつかない展開。4話…