永井路子 の 王朝序曲―誰か言う「千家花ならぬはなし」と〈上下〉

★3.5
藤原氏の中核をなした北家の隆盛を築いた男・冬嗣の眼を通して平安初期を描く。北家にあって駆け出しの若き父、渡来系の母から生まれた冬嗣が、いかなる才能を持ち、いかなる幸運を掴んでトップに上り詰めたのか。そして、平安期を通して恐れられた怨霊思想はどうして生まれたのか。

《上巻》
奈良朝末期に称徳女帝死後の皇位争いで、廃れ皇子の白壁(光仁天皇)を担ぎその皇子・山部(桓武)を皇太子に据えたのは藤原式家の百川である。その過程で、一旦皇后とした井上内親王と皇太子の他戸(おさべ)を光仁天皇を呪詛したとして罪(巫蟲)を着せ死に追いやっている。更には、桓武即位後