女は一日にしてならず

 桜木紫乃の「緋の河」を読了した。著者は直木賞作家で、女性の性愛をモチーフとした作品が多いため、「新官能派」と呼ばれている。本書は、ニューハーフタレントのカルーセル麻紀をモデルとして、彼女?の波瀾万丈の前半生を描いたものである。
 物語は、昭和24年の正月に始まる。北海道の釧路で昭和17年の秋に、昔気質な父親の平川時次郎と辛抱強い母親マツとの次男に生まれた秀男は、小学校入学を目前にしていた。秀男には頭の良い兄の昭夫、面倒見の良い姉の章子、弟の松男の兄弟がおり、秀男は優しい章子とばかり遊んでいた。家族とともにとともに厳島神社に初詣に向かった秀男は参道で賽銭