杉本苑子 の 江戸芙蓉堂医館

★3.3 この作者こんな作品もあるのかと手にした1冊。7つの連作。日本橋宇田川町の次兄の屋敷内で医館・芙蓉堂を開く千鶴は23歳、父は奥医師筆頭の法印・半井元養である。

物語は奇態、珍妙な事件を千鶴のひらめきで解決していくが、千鶴の着想力が読みどころ。汚物処理の乞食のしくみ。相手取り違えの心中。腹の中で猫が鳴く。江戸はあやかり信心が大はやり。川開きの趣向が身投げに。やぶ医者祐庵の副業。年末取り立てに医者を呼ぶ。

あやかり信心のにわか祠を設置しようとする「花はさくら木」はありそうで面白い。水天宮を江戸屋敷に勧進した久留米藩に倣おうというものだ。

紅梅新