連載:シニア

「『後期高齢者』なんて呼べない」

「鍵がないのよ」
「必ずありますよ。自分が歩いた場所をもう一度辿ってみました?」

「みたみた、ないのよ。」
入口の鍵をなくしたと彼女は真剣に探しているが、同僚はゆったり構えている。

「雨が降ってましたよね。傘の中は?」
更衣室から大きな声が聞こえた。
「あったぁ!」

彼女は先日「後期高齢者」になったばかり。職場は昼間は3人の職員で、9人の認知症高齢者の世話をするグループホーム。

もう一人の同僚も「後期高齢者」。この二人と仕事する日が一番楽しい。

キビキビ動くし、入居者に明るく声掛けし、よく笑う。何と言ってもとにかく楽