五木寛之「親鸞」

 著者のエッセイは何冊か読んだことがあり、時代が求めているものを嗅ぎ分ける臭覚にはとても鋭いものを感じた。一方で、内容的にはあまり共感を覚えなかった。しかし、さすがにベストセラー作家だけあって、本書は非常に面白かった。

 8歳の忠範はすでに父母は亡く、幼い2人の弟と共に貧しい下級貴族の家に厄介になっている。市井の聖と交わり、比叡山での修行を決意する。比叡山では範宴の名を与えられ、頭角を表す。しかし、比叡山での修行に満たされぬものを感じ、山を降りて法然門下に加わり、綽空の名を与えられる。その法然門下も離れ、法然の教えを自分なりに広めるため三度改名し、