藤井邦夫 の 「出戻り-新・知らぬが半兵衛手控帖(19)」

★3.3 新シリーズ19作目。
最近は老盗人の「隙間風の五郎八」がよく登場する。「脅し文」では投げ文に書かれた同業の〈夜狐の長次郎〉に関する話。「目利き」では有名な刀剣などの盗みを専門とする盗人探索にからむ。

「出戻り」では半兵衛が助っ人に頼んだ柳橋の弥平次の船頭・勇次が活躍する。犯人の舟による逃走を予期した半兵衛によるもの。

「手遅れ」のテーマは不在証明(アリバイ)を覆す話。殺人現場近くで小間物屋から鼈甲の櫛を万引きした女に半兵衛は不自然さを覚えた。女は御家人の夫を亡くしたばかりの妻女で、入谷鬼子母神そばの長屋で組紐を編んでいる。小説には