3月16日から31日までに読んだ本

①混声の森(下)(松本清張  光文社文庫)
 専務理事の石田の野望は、文字通り成功裏に終わるかに見えた。新学長を迎えての記者会見も滞りなく終わった。後は、新体制による大学の教育方針の刷新と、具体的な組織の再編に向かうところである。しかし、理事長就任を果たした石田の心中に言いようのない不安が影を落とす。新学長との面接の中で、石田は忠誠を誓うが、ややあって、新学長から理事長辞任の方針が示される。石田自らが招いた落とし穴でもあった。「天網恢恢疎にして漏らさず」である。大きな事件が起きて、犯人を捜したり、動機を見つけたりする物語ではない。テーマは「人間不信」と言