1904年~1906年にかけて書いた長編小説「破戒」は、長野県飯山で教員生活を、この小説を書くにあたって、辞め上京して34才に自費出版しました。 上京した2年間の生活は厳しくて、幼い子供たち3人を病気で亡くし、妻も栄養失調のため1910年に亡くなりました。 「破戒」は日本の封建制のゆえに、同じ人間でありながら差別されるという不合理を日本の悲劇として取り上げています。 作者は、明治時代になっても…
「千曲川のスケッチ」 島崎藤村著 岩波文庫 1943年3月10日発行 ーわたしの心は詩から小説の形式を選ぶようになった。この書のおもなる土台となったものは3、4年間ばかり地方に黙していた時の印象である。 わたしがつぎつぎいに公にした「破戒」、「緑葉集」、それから「藤村集」と「家」の一部、最近の短篇なぞ。 寂しく地方に住む人たちのためにも、この書がいくらかの慰めにならばなぞとも思う。 大正…