「辻村深月」の日記一覧

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少しふしぎ

 藤子・F・不二雄原作、辻村深月著の「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」を読了した。著者は直木賞作家であるが、子供の時からの、コミック「ドラえもん」の熱烈なファンであることで知られている。本書は、著者が脚本を担当した「映画ドラえもん「のび太の月面探査記」」を著者自らノベライズしたものである。  故障した月面探査機が捉えた白い影が、TVで大ニュースになる。その白い影が月に住むウサギだと主張…

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過去の怨念

 辻村深月の「噛みあわない会話と、ある過去について」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、登場人物達の過去の怨念を描いた、久々の「黒」辻村作品である。  「ナベちゃんのヨメ」:大学を卒業して七年、大学のコーラス部で一緒だったナベちゃんこと渡辺佳哉が結婚することになり、元コーラス部員達にもメールで挨拶状が送られてくる。しかし、そのメ…

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オホーツクの青い空

 辻村深月の「青空と逃げる」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、父親の巻き込まれた事故により逃亡を余儀なくされた母子の逃避行と家族の再生を描いた物語である。  本条早苗はかつて、鶴来嵩が主宰する剣会という小さな劇団に所属する俳優だったが、同じ劇団に所属する拳と結婚した後は引退していた。本条家はその後生まれた息子の力と三人暮らしで…

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うさぎの泣き声

 辻村深月の「ぼくのメジャースプーン」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、超常能力を持つことを知った小学生の少年の煩悶を描いた作品である。  本書の語り手は、小学四年生の「ぼく」であり、幼い時には知らなかったが、母親の家系に時々現れるある特殊な能力を持っている、「ふみちゃん」はぼくの幼馴染で、分厚い眼鏡を掛け、歯には矯正ブリッジ…

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SFの愉しさ

 辻村深月の「凍りのくじら」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、著者の第三作目の作品であり、父親を失った少女に訪れた小さな奇跡が描いたものである。  本書は主人公である写真家芦沢理帆子の高校生時代の懐旧談という形式で語られるが、各章のタイトルが藤子・F・不二雄の作品である「ドラえもん」に登場する「ひみつ道具」であることが特徴であ…

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時を超える心の絆

 辻村深月の「かがみの孤城」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、鏡の中の世界にある城に集められた七人の不登校児童達の交流を描いたファンタジーである。  本書の主人公の安西こころは、雪科第五中学校に入学早々、クラスメイトの恋愛沙汰から虐めに遭い、不登校になってしまう。心配した両親はフリースクールへの通学を勧めるが、登校日になるとこ…

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iとθの殺人ゲーム

 辻村深月の「子どもたちは夜と遊ぶ(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、幼い時に別れた双子の兄弟が会うためのハードルとして開始した殺人ゲームが描かれる。  物語は、大学受験を控えた高校生の赤川翼が失踪した事件から始まる。その事件は。当初は単なる家出と考えられていたが、やがて、その後に起こった連続殺人事件の一件目であった…

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秘密のない夫婦

 辻村深月の「クローバーナイト」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、新米の父親がナイト(騎士)として、家族の幸せを守るために奮闘する姿を描いた、5編からなる連作短編集である。  本書の主人公で、35歳の鶴峯裕は、親友の個人事務所で働く公認会計士である。 大学の同級生だった妻の志保はオーガニックコットン専門のブランドを立ち上げて成…

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丸の内の国際社交場

 辻村深月の「東京會舘とわたし(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリ出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、有楽町駅のすぐ近くにある東京會舘の歴史を描いた、10章からなる小説である。  大正12年(1923年)5月4日、大学卒業後、作家になる夢が破れて故郷の金沢で逼塞していた寺井承平は、帝国劇場(帝劇)で開催されるフリッツ・クライスラーのヴァイオリン演奏会を聴…

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雪の学校に閉じ込められた8人

辻村深月の「冷たい校舎の時は止まる(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリ出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、メフィスト賞受賞作で、著者のデビュー作である。  物語は、センター試験もほど近い雪の朝に、県下随一の進学校である私立青南学院高校に、8人の高校三年生が登校するところから始まる。  辻󠄀村深月は、幼馴染の鷹野博嗣とともに登校する(なお、…

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二人のお母さん

辻村深月の「朝が来る」を読了した。著者はメフィスト賞を受賞してデビューしたミステリー作家で、直木賞も受賞している。最近はミステリー以外の分野の作品も多く、本書は、特別養子制度をモチーフとした物語である。  川崎市武蔵小杉の高層マンションに住む栗原家に、最近度々無言電話がかかって来る。しかし、その日佐都子が受け取った電話は、五歳になる息子の朝斗が通う幼稚園からで、朝斗が同じマンションに住む友達の大…

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一夏の恋

辻村深月の「水底フェスタ」を読了した。著者はメフィスト賞出身のミステリー作家で、2012年に第147回直木賞を受賞している。本書では、山間の村に住む男子高校生が出遭った衝撃的な一夏の恋が描かれる。  物語の舞台は、六ヶ岳という架空の山岳地帯の南麓に位置する山村の睦ッ代村である。睦ッ代村は、東京の日馬開発という企業と組んで誘致した「ムツシロ・ロック・フェスティバル」が成功したため財政的に裕福であり…

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きのうの裡に終わった恐怖

辻村深月の「きのうの影踏み」を読了した。著者はメフィスト賞を受賞してデビューしたミステリー作家で、直木賞も受賞している。最近はミステリー以外の分野の作品も多く、本書も現代風に描かれた怪談をテーマとした短編集である。なお、著者インタビューで、著者は以前から怪談を書いてきた旨のことが述べられているが、ホラーっぽい作品はあったが、怪談を扱った作品は本書が初めてである様に思う。また、本書の収録作品の内の…

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家族シアター

辻村深月の「家族シアター」を読了した。著者はメフィスト賞を受賞してデビューしたミステリー作家で、直木賞も受賞している。最近はミステリー以外の分野の作品も多く、本書も家族の機微をテーマとした7編の短編を集めた短編集である。  「「妹」という祝福」:亜季と姉の由紀枝は1歳違いの年子のため、同じ中学校に2年間通うことになる。姉は真面目な優等生であるが、身形には無頓着であり、それに反発した亜季はイケてる…

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アニメのお仕事

辻村深月の「ハケンアニメ!」を読了した。著者はメフィスト賞出身のミステリー作家で、2012年に第147回直木賞を受賞しているが、最近はミステリー以外の分野の作品も増えている。本書もミステリーではなく、アニメ業界を描いた、いわゆる「お仕事小説」である。本書は、雑誌「アンアン」に連載されたものを単行本化したもので、体裁としてはアニメ業界で働く女性を主人公とした三篇の中編と、それら全ての後日談を纏めた…

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盲目的な恋の破局に潜む謎

辻村深月の「盲目的な恋と友情」を読了した。著者はメフィスト賞出身のミステリー作家で、2012年に第147回直木賞を受賞している。本書は二部構成で、第一部はある若い女性の盲目的な恋とその破局が描かれ、第二部ではその女性の友人の女性の視点によりその恋の破局に至る経緯が描かれており、全体としてミステリー仕立てになっている。  「恋」:物語は、結婚式に臨む主人公一瀬蘭花の回想から始まる。蘭花は大学のオー…

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島の青春

辻村深月の「島はぼくらと」を読了した。著者はメフィスト賞出身のミステリー作家で、2012年に第147回直木賞を受賞している。本書はミステリーではなく、瀬戸内海に浮かぶ小島の冴島を舞台として、4人の高校生の生活を描いた青春小説である。本書の主人公は、父親を海の事故で失いながらも気丈で明るい母、祖母と三人で暮らす池上朱里、美人でおしゃれだが自分の意見をはっきりと主張する網元の一人娘榧野衣花、4人の中…