3月の俳句帳(83)令和2年3月31日
1)春暁や清流杭に翠羽載る 2)大濠のがらんと広き鴨帰る 3)鶯の谷渡り聴く藪(やぶ)小道 4)囀りを深山で聴く丸太小屋 5)庭座敷墨摺りながら聴く初音 6)探鳥の歩く川岸風光る 7)座禅会警策の音水温む 8)朝読経合わす初音の法法華経 9)微温燗(ぬるかん)で土筆(つくし)和え物早夕餉 10)躙(にじり)口射し込む茶室藪椿 11)夕落暉沖から一線春の海 12)蝌蚪の紐(ひ…
1)春暁や清流杭に翠羽載る 2)大濠のがらんと広き鴨帰る 3)鶯の谷渡り聴く藪(やぶ)小道 4)囀りを深山で聴く丸太小屋 5)庭座敷墨摺りながら聴く初音 6)探鳥の歩く川岸風光る 7)座禅会警策の音水温む 8)朝読経合わす初音の法法華経 9)微温燗(ぬるかん)で土筆(つくし)和え物早夕餉 10)躙(にじり)口射し込む茶室藪椿 11)夕落暉沖から一線春の海 12)蝌蚪の紐(ひ…
1)天漏(てんろう)の降り裂けし河秋出水 注)天漏 = 長雨 2)粗朶(そだ)道の行き着く一軒秋深山(みやま) 3)新蕎麦(そば)の幟(のぼり)目当てに散歩する 4)炎帝の日矢受け我慢鬼瓦 5)浮き世泥糧(かて)に麗し蓮の花 6)大白(たいはく)を干し太白(たいはく)の秋夜空 注)大白=大盃 太白=金星 7)秋陽射し樹影の揺らぐ書斎壁 8)葭原(よしはら)に巣作り励む行々子…
1)山御堂猫も思わず目借り時 2)茅葺きのさみどり萌えて山の春 3)黄の揺らぎ光りて庭に紋黄翔ぶ 4)法華経や囀り渡る寺の朝 5)襖絵の竹林賢者霞棚引く 賢者=七賢人 6)街灯の連翹(れんぎょう)照らす黄の灯り 7)行く川に波紋残して鳥帰る 8)鳥風の吹きて干潟の群れ北へ 9)敷石を割りて蒲公英(たんぽぽ)健気咲く 10)花菜畑棚田を照らす里灯り 11)木洩れ日の揺らぐ座卓の…
1) 清貧の苫屋(とまや)庭咲く梅白し 2) 初釜や烟(けぶ)る床の間花一枝 3) 気嵐(けあらし)の立ちて物音静まれり 4) 杣(そま)道も景に溶け込み山眠る 5) 寒雀(すずめ)投網打つごと枝移る 6) 霊峰に粛々登る初日の出 7) 早鳥の庭淑気に満ちて人気なし 8) 沈金の輪島座卓に屠蘇(とそ)を酌む 9) 頬を刺す風の痛さや月凍る 10)目印は障子明かりや鄙(ひな)…
1)蠟燭の芯燃え尽きて枯蟷螂 2)冬格子射し込む蔵のほの明かり 3)一隅を照らす山茶花寺の庭 4)笹鳴きの声は移れど貌見せず 5)木洩れ日の移ろい覚めて日の短 6)はや三とせ猫の行方は漱石忌 7)冬日向猫の子一匹庭座敷 8)山道の傍ら朱き藪柑子 9)荒涼と町並み黙し月冴える 10)水筒の筧(かけい)の跳ねて寺冴ゆる 11)濠の暮れ老鷺に迫る凍て寒波 12)遠つ国飛来濠面の浮…
1)天つ風鄙(ひな)の谷間の柿すだれ 2)ころ(枯露)柿の軒を灯して黄昏れる 3)茱萸酒漬け人に振る舞う観音寺 4)枝折り戸をそっと開けば青木の実 5)七竈(ななかまど)燃やし尽くして葉を落とす 6)楓紅葉(かえでもみじ)虫食い残すアートかな 7)水琴の調べ聴く寺木守柿 8)夕庭の筧(かけい)を照らす石蕗の花 9)うらぶれて敷石汚す濡れ落ち葉 10)柑橘を一つ新蕎麦香り添へ …
1)夕景を引きて穭田(ひつじだ)老いの鷺 2)藍染めの夜空に銀河鄙(ひな)の谷 3)雨脚の甍(いらか)打つ音深む秋 4)天井に揺らぐ木洩れ日秋陽伸び 5)影伸びて石灯籠の庭の黙(もだ) 6)新蕎麦の温もり暖簾に明かり点き 7)黄落(こうらく)や画布に厚塗る写生会 8)稲架(はざ)を掛け終えし夕餉の飯の味 9)山寺の縁で酌み合う十三夜 10)焼き魚漂う厨(くりや)ぬくめ酒 11…