「木下昌輝」の日記一覧

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八百比丘尼の伝説

 木下昌輝の「人魚ノ肉」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、幕末の世に、不老不死の妙薬と言われる人魚の肉を食べた坂本竜馬と新撰組隊士の運命を描いた、8篇の短編小説からなる伝記小説の連作短編集である。  「竜馬の夢」:慶応3年11月15日、坂本竜馬と中岡慎太郎は近江屋の二階で、少年時代の思い出を語り合っていた。ある夏の日、彼等と岡…

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木下昌輝の「敵の名は、宮本武蔵」。

★3.5 直木賞候補作 武蔵と対決したとする剣豪8人、それぞれの視点で新たな武蔵像を描いていく。 縦糸は武蔵の左足にある青黒い痣、武蔵の出自にからむ謎。シシドといっしょに売られた娘の黒猫には左後足の先のみが白。 そして最後に登場する同じ模様の猫、その猫に語りかける老いた農夫。「弁助(武蔵)よ、お主は誰よりも強くなって、儂(無二)を殺すのだ」と。 これですべての話は繋がるのだが、多視点ゆえか…

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忠犬か狂犬か?

 木下昌輝の「敵の名は、宮本武蔵」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、宮本武蔵と立ち会って敗れた男達を描いた、7篇からなる短編集である。  「有馬喜兵衛の童打ち」:鹿島新当流免許皆伝の有馬喜兵衛は、九州の大名有馬家の家臣であったが、島原沖田畷の戦いで、自らの失策で「童殺し」の汚名を負ってしまう。国を追われた喜兵衛は鹿島新当流を破…

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山本勘助の謎

 木下昌輝の「戦国24時-さいごの刻-」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、戦国の世に生きた6人の男達の最期から遡る24時間を描いた、6篇からなる短編集である。  「お拾い様」:語られるのは豊臣秀頼。太閤秀吉の遺児秀頼は、六尺五寸(197cm)、四十三貫(161kg)の巨躯で、武芸にも優れているが、母親の淀殿の制止のため、戦場に…

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大坂の舞台芸

木下昌輝の「天下一の軽口男」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、上方落語の始祖と言われる米沢彦八の、笑いに生きて笑いに死んだ一生を描いたものである。  物語は、飛騨高山藩士の息子で、飛騨の麒麟児と呼ばれた虎丸が、飛騨高山の金森家出身で、京都所司代板倉重宗の依頼で「醒睡笑」を著し、落語の祖とも称される安楽庵策伝の許に弟子入りを請う…

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木下昌輝の「天下一の軽口男」。

★3.8 上方落語の祖・初代米沢彦八の生涯を描いている。 難波の漬物屋の次男・彦八は幼い頃から、祠裏の広場に子供たちを集めて滑稽芝居に興じていた。 なかでも親方役の娘・里乃を笑かすことに至上の喜びと感じている。 辻咄家・鹿野武左衛門を頼り江戸に出た彦八は頭角を現すが、奸計にはまり江戸を追われて大坂に。生玉神社境内の小屋を舞台に絶頂期を迎える。 現在の寄席形式の落語となる前には、いろんな形…

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無想の抜刀術

木下昌輝の「宇喜多の捨て嫁」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、表題作で第92回オール讀物新人賞を受賞しており、月刊誌に掲載された短編2篇に書き下ろしの短編4編を加えた本書で単行本デビューを果たしている。  本書の主人公は、斎藤道三や松永久秀に並ぶ悪人とされる宇喜多直家で、妻の実家や娘の嫁ぎ先を謀略を用いて次々と攻め滅ぼした一代の梟雄であるが、本書では直家の本当の姿は、世間に知られているもの…