梅花8態(大宮公園)

「胡蝶」のワキ

梅が香に昔を問えば春の月答えぬ影ぞ袖にうつれる(能「胡蝶」より)

能に「胡蝶」という演目がある。
早春の梅花と晩春の蝶が出会うことはない。
花を愛する胡蝶は女人になって梅を眺めていた僧に梅の花を愛でたいと頼み、聞き入れてもらい梅の花と戯れ、僧に礼を言って消えていく。荘子の「胡蝶の夢」或いは源氏物語の「胡蝶の巻」などの古典が取り入れられ、冒頭の歌も新古今和歌集に載る藤原家隆の歌。
胡蝶はきっと梅の花の後ろにも回っただろう。どうしても梅に限らず表の美しさにとらわれるが、咢の方から眺める梅の花も捨てたものではない。赤茶色の星形に見える姿はいかにもワキがシテを引き立たせようとしっかりと支えているに思えるのだが。

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