梅花8態(大宮公園)

緑咢梅

妻のほか黒髪知らず夜の梅(能村登四郎)

大宮公園で最も見たい梅がこの緑咢枝垂れ梅なのだ。
ほとんどの梅の咢は赤茶色なのだがこの梅の咢は緑色をしている。小枝も緑色。花弁は白だが陽の射し方によって咢の緑が花弁を薄く緑色に塗る。この日は曇り空、陽が射すこともなく花弁は白く緑を映す気配は全く見られなかった。
能村登四郎は教師一途であった。そして愛妻家であった。こんな句がある「老残のこと伝はらず業平忌」業平といえば活発な艶聞家であったが老いてからの業平については伝わっていない。一方女性としての艶聞を多く持つ小野小町は「老残」の伝説も多い。登四郎は
「妻のほか黒髪知らない」自分と比して業平に羨望の目を向けたのではないかと多少の邪推を含めて思っている。一方で「老残」を見せない業平を敬慕していたのかもしれない。
夜の梅はこの緑咢梅が似合う。赤い咢を持つ梅は艶が表に出る。この梅は艶が沈潜して妻の黒髪を慈しむ心情に似合うのではないか、と。

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