越辺川(越生)春の花

アケビ(木通)の花

あきらめもつかず逢い得ず朱火(アケビ)咲く(自作)

もう何十年前になるだろう、今の厚顔のちょい悪老人ではない、まだ紅顔の美青年の頃、終生尊敬をした先輩がいた。
「けんけん、アケビの花言葉しているか」もちろん知るわけがない。
「唯一の恋だよ。雌花と雄花が離れて咲くからさ」さらに続けて言う。
「男はな、何度恋をしてもその時は唯一の恋なんだ。男は過去を振り返らない。常に前を向いてその時が唯一なんだ。それだけ男は純情なんだ」
呑めぬ私を前に置いて聞し召した先輩が一席ぶったのを思い出す。
その先輩は心臓に人工弁を抱え、取り換える手術で入院する前日に呼ばれた。
「頼まれてくれ。俺に万一のことがあったらお前訪ねろ、と言ってある女性がいる。最後の唯一の恋の相手だ」そこでニヤリ「その時はよろしくな」
先輩は残念ながら戻ることはなかった。女性が訪ねてくることもなかった。
アケビの実は知っていたが花は知らなかった。こうして撮った写真で思い出した。
彼岸から先輩は案外舌を出してアケビの実を食べているかもしれない。

※日記「越生散歩」を投稿しました。
 https://smcb.jp/diaries/8508971

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