越辺川(越生)春の花

八重山吹

風の来て黄金浄土や濃山吹(山本右近)

「お代官様 いつもお世話になっております。本日は些少ではございますがお納めくださいませ」
「ウフフフ、越後屋お主も悪よのう」
二人の間にあるのは袱紗に包まれた山吹色の小判。

八重山吹の中でも一層鮮やかに花開くのを濃山吹(こやまぶき)という。濃山吹はどこか欲望の世界へ誘うような匂いを漂わせる「悪の華」に思えるのは越後屋の印象が強いせいだろうか。
そういえば道潅に差し出した山吹の花は八重山吹でなければならない。実のない山吹は八重山吹で、一重の山吹は実をつけるそうだ。
八重山吹も浄土の花になったり惡の華になったり忙しい。

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