花菖蒲 余滴八話(オフ会・堀切菖蒲園)

胡蝶の夢

「いつまでも いつの日も 忘れない恋がありますか
 触れぬまま 風のように
 あなたを慕(おも)う日々は胡蝶の夢・・・」
               (作詞・作曲大黒摩季)

古い歌謡曲、演歌以外耳に残らないのだが、大黒摩季というシンガーソングライターの唄を聴くことがある。透き通った乾いた高音が好きなのだ。この唄は特に耳に残る。
とはいえ「胡蝶の夢」といえば荘子の説話。紀元前。中国の春秋戦国時代の思想家の一人。
老子と考え方は近いが、政治色がないのが大きな違いだろう。
坂口安吾が守銭奴で大酒飲みで大助平で怠け者で精神的なんてものは何一つないといふ男を主人公にした「金銭無情」という小説の中で「夢に見た蝶々がオレだか、今のオレが夢だか分るもんかという荘周先生の説はここのところかも知れない」と書いている。何しろこの男の夢は長いので興味があったら読んでみてほしい。
摩季さんの、荘周先生の、そして大助平の男の「胡蝶の夢」それぞれ捨てがたい。ところで我が目の前の胡蝶は菖蒲の蜜を吸うのに忙しそう。すぐに他の菖蒲へと飛び回る。とても夢を見ている暇はないようだ。

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