夏華大笑(久喜・正法院の花)

花茗荷

花茗荷土の湿りに膝つけば/藤木倶子

いつもながら昔のことだ。
八戸(青森)の第3セクターだったと思うがその専務取締役と仕事の関係で八戸で何度かお会いしていたが、上京するので訪ねると連絡が入った。当日事務所で待っているとお二人、小柄ながらスタイルの良い美形の若い女性と。専務は八戸市だったか青森県だったかの役人から転じ、第3セクターの責任者になっておられた。当時60歳は越えておられた筈。
久闊を叙し僅かに仕事の話をする。専務、女性を紹介しない。「お嬢さんですか」女性が突然笑い出した「家内です」専務がぶっきらぼうにしかしどこか自慢げな声音だった。それからしばらく、専務そっちのけで奥様との雑談の中で俳句を楽しんでいると仰っていた。
後日、八戸で専務とお会いしたら「家内がね、あなたのことを女を見る目がある、あなたと同じでと言っていましたよ」
数年経って奥様から1冊の函入りのご本人の句集が送られてきた。「清韻」3冊目の句集。
4年前、朝日新聞の全国版に訃報が掲載された。享年87歳。私より1回り上だった。
調べてみると句会を主宰し数々の賞を受賞されていた。日本文芸家協会会員に推挙されている。
あの時は決してお世辞ではなく、本当にそう思ったのですから。と訃報を見た時呟いたことを思い出す。合掌

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