夏華大笑(久喜・正法院の花)

猩々草

「老いせぬや。老いせぬや。薬の名をも菊の水。盃も浮かみ出でて友に逢うぞ嬉しきこの友に逢うぞ嬉しき・・・」(能「猩々」より)

猩々は中国で生まれた架空の動物。ヴェトナム辺りに住み、毛色は黄色で声は子供のようだが、時に犬が吼えるように振る舞い、人の言葉を理解し、人の顔や足を持ち、酒を好む動物と中国の薬物書「本草網目」に書かれている。
宮崎俊監督の「もののけ姫」にも登場する。
私にとっての猩々は能でのイメージが強い。真っ赤な衣装を纏い、酒に浮かれながら舞い歌うめでたい能なのだ。
能よりずっと後、明治になって渡来したこの植物に猩々の名を付けたのはヴァイオリンのような形をした葉の中央にある花を葉の基部が真っ赤になって守っているように見えて健気だ。その赤さが能の猩々を彷彿させたのかもしれない。
この日、朝方まで降っていた雨が葉の上に残っていた。猩々は「甘露、甘露!」と一層顔を赤くしているようだ。

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