安行桜5態(密蔵院)

落花

水昏くなりて落花のささめごと (柴田朱美)

境内の隅に目立たぬように蹲(つくばい)が置かれていた。
安行桜もまだ盛りの内、落す花びらも多くはない。それでも筧の周りに寄り集まっている。
いつものことながら出かけるのが遅いので、少し経つと陽は中天から西へ傾き始め影を長くしていく。蹲の水面に映った青空が消え、黒みがかって来た。
僅かに花弁のひそひそ話が聞こえてくるような静寂が一瞬訪れた。

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