「矢野隆」の日記一覧

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矢野隆 の とんちき

帯封には〈ここは江戸の「トキワ荘」だ!!〉 江戸最強の出版人、蔦屋重三郎。そして、才能の開花を待つ、まだ何者でもない天才たち。葛飾北斎、滝沢馬琴、十返舎一九、東洲斎写楽の名が大書きされている。 物語は蔦屋重三郎の営む「耕書堂」が舞台の2年間の物語。時代は寛政の改革で財産半分の没収という罰を受けた2年後(1793年)のこと。山東京伝や喜多川歌麿は既に名をなし一本立ちしており、大田南畝などは既に足…

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矢野隆 の 乱

★3.4 「島原天草の乱」を下島の森の中で育った野生児・虎の目で描く。 初期の研究では、幕府が大規模な一揆に目が集まるのを避けるため切支丹によるものとした。そして次は島原の松倉家、天草の寺沢家による過酷な年貢徴収に耐えきれなかった農民が主体とされた。 近年の研究では、民衆を計画的に組織し、島原と天草を同時に決起せしめた勢力の存在を強調する。この物語はその説に従って展開する。 四郎の父・益田…

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矢野隆 の 愚か者の城

★3.5 「大ぼら吹きの城」の続編。 秀吉が城を持つまでの時代を、お市の浅井家へ輿入れから小谷落城までを重ねて描く。既に藤吉郎は2千人を率いる侍大将になっている。 明智光秀という男に初対面からの印象。竹中半兵衛の獲得譚。観音寺城の出城・箕作山城(みつくりやま)攻め。金ヶ崎の撤退戦に於ける殿軍。姉川の戦いと横山城守将。佐和山城攻略。比叡山焼き打ち。そして最後は朝倉掃討、浅井の小谷城戦。 姉川の…

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矢野隆 の 我が名は秀秋

★3.4 秀俊(後の秀秋)が秀吉の命で小早川家に入れられるところから始まる。まだ13歳のこと。だがその才のひらめきを認めたのは隆景。 誕生した秀頼を溺愛し、何ら落ち度のない関白秀次に謀反の罪を着せ、妻子30数名の命をも奪う秀吉。それを当然のように執行する三成以下の家臣団。 兄とも慕う秀次だったたけに、秀俊には秀吉が単なる獣のように見えた。幼い頃に実の両親から引き離され、唯一の肉親と感じていた…

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矢野隆 の 朝嵐

★3.5 源八郎為朝の生涯。平岩弓枝の「私家本 椿説弓張月」とは異なり、こちらは伝説通りの乱暴者。 幼い頃から京の賊の首領となり、父の為義から薩摩の追われた。九州では大宰府に反抗する勢力となり、京に帰れば訳もなく〈保元の乱〉に父とともに参加し義朝・清盛に敵対するが敗戦。伊豆大島に流されると、伊豆七島の罪人の頭に納まり、都に敵対する。最後は大島で琉球渡航説はとらない。 「蛇衆」や「凜と」のよう…

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矢野隆 の 大ぼら吹きの城

★3.5 使い古された墨俣一夜城のネタをまた読まされるのかと危惧したが、どうして。 清州で信長の小者頭として仕える頃から美濃攻略の起点となる墨俣築城までを描く。 針売り時代からの蜂須賀小六との絆の復活や、川筋衆をまとめ上げる過程で己の生きる道を悟っていく。 浅野又右衛門の娘・於禰との出会いや川筋衆の頭どもとの出会いなど、初対面の者には大ぼら吹きを押し通す。 そして持ち前の人たらし、藤吉郎…

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矢野隆 の 山よ奔れ

★3.3 幕末の筑前勤王党と博多祇園山笠の男たちを描く。 土佐と同じくここにも尊王攘夷を先走りする月形洗蔵たち筑前勤王党の物語があった。ここでも「わくろう(蛙の意)どん」と称される下級武士たちが多数を占める。幕府の一次長州征伐で、その調停に奔走し、都落ちの公家を引き取り高杉を匿うが・・・。 やがて、藩主の気持ちが一転し、勤王党を冷遇し始めることに・・・。勤王党の先行きを憂う洗蔵は、博多の街で…

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酒を呑む鬼

 矢野隆の「鬼神(おにがみ)」を読了した。著者は、小説すばる新人賞を受賞した時代小説作家である。本書は源頼光の鬼退治をモチーフとした伝奇小説である。  足柄山に母親とともに住む住む坂田公時は、齢十七歳で七尺を超える体軀を誇り、素手で熊を倒す偉丈夫である。その公時の許を、清和源氏の棟梁の源頼光が訪れる。亡き公時の父親の坂田蔵人は、かつて頼光の父親の満仲に仕えて勇名を馳せた武士であったが、何故か主の…

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矢野隆の「生きる故(ゆえ)」。

★3.3  14歳の飢(かつ)は盗賊の頭に養われた。己の出自は、関ヶ原の敗残兵に襲われた村の娘が生んだ子である。 不要な子として扱われ、それに反発して人を殺してでも生きようとして来た飢は、阿修羅のような働きをする。 そして大坂の陣、浪人の募集に応じると、後藤又兵衛に出会い、真田信繫を紹介される。 冬の陣を経て夏の陣、又兵衛と共に戦うが信繫への使者を。その信繫からも秀頼への書状を託された。皆…

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矢野隆の「凜と咲きて」。

★3.5 こういうのを超人ものというんだろう。前の「蛇衆」もそうだったが、登場する凛も藤兵衛もはちゃめちゃの超人。 凛は普段は三味線を抱えての芸者が生業、がその三味線には仕込まれた刀と撥が凶器に変わる。 そして窮地には、己の丈より長い斬馬刀(備前長船の博物館で見たような)を振り回す。 そして藤兵衛はどんなに切り刻まれても生き長らえるという超人。 超人の対極には本間進之助という人を嬲ること…

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矢野隆の「蛇衆」。

★3.5 「蛇衆」と呼ばれる6人の傭兵集団の物語。 戦国期、舞台は筑後と肥後の境にある鷲尾領(モデルは熊本県荒尾あたりか)。 蛇衆は金でのみ雇主と繋がり、主従関係は結ばぬ非情の集団、彼らの前歴は武士ではなく社会からのあぶれ者。 朽縄、鬼戒坊、孫兵衛、無明次、夕鈴、十郎太、雇主との仲介役の宗衛門、それぞれが得意な武器で戦う。 物語は鷲尾家の家督争いに因をなす謀反に巻き込まれた蛇衆、次々と命…