さんが書いた連載俳句帳の日記一覧

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11月の俳句帳(91)令和二年11月30日

1)蠟芯(ろうしん)の減り行く焔(ほむら)釣瓶落とし 2)老身の燃え尽く余命釣瓶落とし 3)昏鐘を終えて山寺冬灯し 4)寒月を眺めておりし窓の猫 5)筧落ち四囲の寂静寺の冬 6)初時雨並木彩(いろど)り宵散歩 7)声明(しょうみょう)をエンヤも謡う北の冬 8)入会(いりあい)の鐘鳴り終えて笹子啼く 9)外濠の水脈(みお)を零して塒(ねぐら)鴨 10)いろどりの川辺の木々や踏む落…

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10月の俳句帳(90)令和二年10月30日

1)ししおどし(鹿威し)しじま(静寂)を破る庭山水  (京都詩仙堂の鹿威しを詠む) 2)澄み渡る添水(そうず)唐臼(からうす)古刹(こさつ)庭 3)窓八つ灯る茶室に秋灯り (京都曼殊院書院附茶室八窓軒を詠む) 4)陰と陽秋日差し込む茶室翳(かげ) 5)余韻聴く三井の晩鐘秋の空 (大津市の北西にある三井寺(園城寺)の鐘を詠む) 6)水甕(みずがめ)を鳴らす秋雨寂寞(せきばく)と 7)燃…

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9月の俳句帳(89)令和二年9月30日

1)一輪の菊床の間に侘び茶室 2)雁渡る切り絵と鋏(はさみ)灯す窓 3)移らふ季違はずに染め秋の風 4)三日月を漕ぎて吟行星空へ 5)口偏(くちへん)の蹲(つくばい)「足るを知る」九月 6)今はもう棚田の奥の廃案山子(かかし) 7)鉄路鳴り夜汽車通過の鄙(ひな)の秋 8)ヴィオロンの咽(むせ)ぶ調べや秋雨立つ 9)川瀬音立てて素風を聴く岸辺 10)爽籟(そうらい)や肌に感じる朝…

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8月の俳句帳(88)令和二年8月31日

1)「ポツンと一軒家」夢中酷暑去る 2)秋霖や山奥一軒杣(そま)の小屋 3)新涼に出会いて悟る季の移り 4)コロナ禍で終息見えず猫じゃらし 5)秋西日真っ赤に燃える獅子瓦(かわら) 6)宵闇に老い鷺燈す濠の秋 7)甲高く庭に啼声(なきごえ)白雨来る 8)琵琶哀し灯る鬼灯(ほうずき)平家塚 9)経文の筆を書き終え解夏(げげ)の僧 10)ジグザグと昇る連扇恋揚羽 11)羽ばたきて…

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俳句帳(87)令和二年7月31日

1)恋扇揺らぎて乱舞連揚羽 2)重連の踊る恋扇青揚羽 3)水槽の金魚の泡や魚々子(ななこ)箸 4)朝起きや耳をさすりて蝉時雨 5)人気無き河原飛び来る朝翡翠 6)素麺の乱舞の鍋や茗荷(みょうが)切る 7)万録の山抱き加茂の大楠 8)万緑や一山絵の具塗り込めて 9)川散歩ためらう心半夏雨(はんげあめ) 10)碧潭(へきたん)の烟りし淵に白雨降る 11)線上の白雨の滂沱(ぼうだ)…

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6月の俳句帳(86)令和二年6月30日

1)手に袋拾う庭梅揚羽舞う 2)早起きのモルゲンロート夏穂高 3)万緑の深山(みやま)に埋もれ家一軒 4)夕映えや青鷺孤影濠面伸ぶ 5)澱みたる空気を払う実梅果汁 6)気怠(けだる)さを祓い爽やか実梅果汁 7)青梅を数えて人に配る妻 8)青梅の又落ちる音目覚め朝 9)紫陽花の黙って観ている梅作業 10)黴雨(ばいう)でも待機許さじ梅仕事 11)猫の手も借りたい程の梅仕事 1…

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5月の俳句帳(85)令和二年5月31日

1)揺らぎ舞い折れ舞う揚羽三重連 2)太文字の一期一会や夏茶室 3)黒揚羽付き添い来たる門扉まで 4)雨脚を聴きてででむし潦(にわたずみ) 5)若葉雨浸み込む命苔の庭 6)かん高く雨を呼び込む雨蛙 7)川辺道並木揺るがす青葉風 8)桑の実を所望の媼(おうな)鄙(ひな)生まれ 9)雨の降る対岸燃えし青葦辺 10)子燕の学び始めや雨の川 11)瀬の音に近寄る小鷺夏来たる 12)…

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4月の俳句帳(84)令和二年4月29日

1)粉蝶(しろちょう)の光零して川岸辺 2)立ち上がる草書の色紙春座敷 3)只管打座(しかんだざ)警策背打つ春衣 4)蝌蚪(かと)の池夜空煌めく杓子星 5)杓子道伸びて山宿蝌蚪の里 6)川渉(わた)る小鷺の脚に水温む 7)春の濠暮色を引きて歩む鷺 8)春嶺に白銀載せて壁絵画 9)春霖(しゅんりん)や音の沁み行く杣(そま)小径 10)荒れ庭に飛び出す揚羽萌ゆる翅 11)藍染めの…

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3月の俳句帳(83)令和2年3月31日

1)春暁や清流杭に翠羽載る 2)大濠のがらんと広き鴨帰る 3)鶯の谷渡り聴く藪(やぶ)小道 4)囀りを深山で聴く丸太小屋 5)庭座敷墨摺りながら聴く初音 6)探鳥の歩く川岸風光る 7)座禅会警策の音水温む 8)朝読経合わす初音の法法華経 9)微温燗(ぬるかん)で土筆(つくし)和え物早夕餉 10)躙(にじり)口射し込む茶室藪椿 11)夕落暉沖から一線春の海 12)蝌蚪の紐(ひ…

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2月の俳句帳(82)令和2年3月1日

1)蒼輝る翠羽(すいう)翔び来る凍並木 2)春の濠暮色に染まる鷺一羽 3)藍染めや萌え出す藍の水温む 4)訪れしランプの宿や蝌蚪(かと)の里 5)蕗味噌に飯のお代わり山の宿 6)僧堂の叩く柝木(たくぎ)に春目覚め 7)春光やくるくる削る鉋屑(かんなくず) 8)呑み処獺祭(だっさい)のごと酒並ぶ 9)紋付を羽織り門扉(もんぴ)に春鶲(ひたき) 10)首すくめ風の青土手つくしんぼ

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1月の俳句帳(81)令和2年1月31日

1)濠潜る見渡す鳰(にお)の怪訝貌(けげんがお) 2)此処彼処(ここかしこ)貌浮かべ啼く鳰の濠 3)寒翡翠(ひすい)川風に耐へ見に行かん 4)水飛沫跳ねて餌採る寒翡翠 5)銀鈴を振りて枯岸蒼翠羽(あおすいう) 6)玉(ぎょく)の青まとふ翠羽(すいう)の岸辺凍て 7)枯葦に翠羽(すいう)の蒼を撮る川辺 8)鴨進む暮色を曳いて濠の夕 9)大濠へ暮色引き寄せ鴨の啼く 10)川進む水脈…