さんが書いた連載読書感想文の日記一覧

会員以外にも公開

30、『「田んぼ」(鬼丸智彦作)と「冬の芝居一座」(中島利夫作)』小説2作が懐かしさあり

『「田んぼ」(鬼丸智彦作)と「冬の芝居一座」(中島利夫作)』(山梨文芸協会機関誌『イマジネーション』第18号(令和3年2月1日発行所収)  「田んぼ」 鬼丸智彦作 ー真、小学5年。小4の妹の善美、小3の弟の勇。勉強好きの兄の哲、中学生。加賀美に家のある同じクラスの美子。  台形の富士山、櫛形山、三千メートル級の白根の雪山。八ヶ岳、金峰山、甲武信ケ岳  麦畑に6人(父、母、哲、真、善美、勇)が並ぶ…

会員以外にも公開

16、『ノモンハンの夏』(半藤一利著)は戦争の実態描く

『ノモンハンの夏』 半藤一利著 文春文庫 2001年6月10日発行 ー90歳で亡くなった、半藤一利氏の代表作だと聞いていたので読んだ。読んで、代表作であると思った。戦争の実態を、指揮する軍人、参謀、国に最高権力者、兵士のすべての立場を踏まえて、更に、その戦争を二度としないようにするには、どうすべきかを思い、戦争について描き出していた。見事なノンフィクションだと思った。 ー山本五十六が、こう語って…

会員以外にも公開

15、『遠い島 ガダルカナル』(半藤一利著)は昭和18年のガダルカナル島戦線で日本の敗戦は決定していたと思った

『遠い島 ガダルカナル』 半藤一利著 PHP文庫 2005年4月18日発行 ーの90歳で亡くなった半藤さんの「昭和史」に関する本は、沢山あるが、「ノモンハンの夏」が有名だが、僕は、中山堅恵著『ガダルカナル島戦線』を読んでいて、ガダルカナル島での日米の戦争に興味を感じていたので、この『遠い島 ガダルカナル』を見つけたので読んでみた。分厚い文庫本で、全部の目を通すのに苦労した。けれど、このガダルカナ…

会員以外にも公開

159、『深夜特急4-シルクロード』(沢木耕太郎著)老いてもなお旅という長いトンネルを抜け切れない自分の姿を、モスクの中を吹き抜ける蒼味を帯びたペルシャの風の中に見たような気がした、と

『深夜特急4-シルクロードー』 沢木耕太郎著 新潮文庫 平成6年4月25日発行 ー今こうしてデリーを出発してロンドンへ向かうことができるということが、とても不思議なことのように思えてくる。  再び長い眠りから覚めると体は一段と楽になっていた。起きて、食事に行き、帰って、彼に薬を貰い、飲む。それを4回繰り返すと、熱も頭痛も綺麗さっぱりと消えた。インドの病気は確かにインドの薬でしか治らないのかもしれ…

会員以外にも公開

146、『芥川賞候補傑作選』(鵜飼哲夫編)の「下職人」(埴原一亟作)を読む

『芥川賞候補作選』 鵜飼哲夫編 春陽堂書店 2020年4月10日発行 ーこの本について投稿するのは、偶然である。僕は、文学館協力員の保延さんという女性の方から、僕の父の故郷でもある山梨県北杜市白州町出身の埴原一亟という人が、一般に知られていないが、芥川賞候補に3回なり、結局受賞は逃した。だけど、芥川賞候補になる小説を書いていて、白州町の僕の親戚に、その本などを預けていたと、という話を、その女性か…

会員以外にも公開

145、『橋をかけるー子供時代の読書の思い出』(美智子著)は美智子様の読書を愛する心を記す

『橋をかける 子供時代の読書の思い出』 美智子著 文春文庫 2009年4月10日発行 ー国際児童図書評議会(IBBY)の第26回世界大会においての基調講演。  「子供の本を通しての平和」につき、お話をする。  自分の子供時代の読書経験をふり返り、自分の中に、その後の自分の考え方、感じ方の「芽」になるものを残したと思われる何冊かの本を思い出し、それにつきお話をしてみることではないかと。  「平和」…

会員以外にも公開

143、『痴人の愛』(谷崎潤一郎著)はナオミとの新しい夫婦像描く

『痴人の愛』 谷崎潤一郎著 新潮文庫 昭和22年11月10日発行 ーこの小説は、瀬戸内寂聴などが、『痴人の愛』のモデルになった女性が、まだ生きていると言っていたのを読んでことで、読んでみようと思い、読んだが、そんなにも面白いとは思わなかった。ただ、15歳から関係した女性と、女性が23歳になるまで交流したのなら、現実では、こんな複雑な過程の関係になるだろうとは思わされた。 ー彼女はみんなから「直ち…

会員以外にも公開

142、『林住期』(五木寛之著)は重苦しい時代に生きる方々に、ひとつの涼風となることを夢みて

『林住期』 五木寛之著 幻冬舎文庫 平成20年9月20日発行 ー人生を4つの時期に分けて考えた。「学生期」、「家住期」、そして、「林住期」と「遊行期」。「林住期」とは、社会人としての務めを終えたあと、すべての人が迎える、もっとも輝かしい「第3の人生」のことである。(「白秋期」)  人の一生は、山あり、谷あり、まさに『喜びも悲しみも幾年月』という感じである。  どの時期が人の絶頂期といえるのだろう…

会員以外にも公開

139、「孤高の人」(上)(新田次郎著)は加藤文太郎の冬山単独行の話なり

『孤高の人(上)』 新田次郎著 新潮文庫 昭和48年2月28日発行 ーこの小説は、新田次郎著で僕がまだ読んでない小説で、2人のメールで知り合った方が、新田次郎の代表作でお勧めだと言ったので、探して、読み始めたが、これは凄い生き様であり、その生き方がまっすぐで面白く感動して、やっと上を読了した。 ー「不世出の登山家だ。登山家を山にたとえたとすれば富士山に相当するのが加藤文太郎だと思えばいい」 「昭…

会員以外にも公開

129、「藻屑蟹」(赤松利市著)は東日本大震災の人々の生きざま描く

『藻屑蟹』 赤松利市著 徳間文庫 2019年3月15日発行 ーこの小説は、「ラジオ深夜便」9月号のプレゼント募集に応募して当たり入手した。折角頂いたので、至急に読了した。前半は、ドラマ仕立てのような感じで読んでいたが、このようなことが実際にありうるのだと感じ、後半は、実際の純文学的なリアリテイを感じた。とにかく、東日本大震災の実態に迫っている小説だと思った。 ーフクシマ・フィフテイー。  事故直…