さんが書いた連載おとなの絵本の日記一覧

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「かみなりこぞうの涙」

「どーん」  浴衣(ゆかた)姿の若者たちが、天を見上げる。     「僕だけ一人ぼっち」      かみなり小僧が、下界を見下ろす。 「じゅん」  打ち上げられた最初の花火が、かみなり小僧の涙で消えた。  もう一粒 「じゅん」  次の花火も、途中で消えた。  また一粒 「じゅん」 「いやだー、夕立だ」 「せっかくの花火大会なのに」  あちこち浴衣が揺れている。      かみ…

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「僕の取扱い説明書」

 ぼくのべっどのかたわらには  ぼくのそだてかたがかいてある  取扱い説明書がおいてありました。  もういっぽうのかたわらには  だれかいます。  そのひとは  ぼくをだっこすると  「こんにちわあかちゃん」  「わたしがおかあさんです」  「これからよろしくね」  そういって  取扱い説明書を  ぽいと  すみっこにおいやると  ぼくを    だっこして    おっ…

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「ウイークリー古着ショップ」

 久しぶりに近所の商店街に行ってみると、服屋が出来ていた。  どうやら古着専門店の様だ。  どれどれ、中に入ってみると、何と僕の好みの服だらけ! 「おばさん、このジャケットいくら?」 「それは500円」 「うそ!」 「うそじゃないよ、500円」 「新品なら安くても5万円はするよ!」 「500円」 「じゃ、このセーターは?」 「500円。と言うか、みんな500円」  どれも手にした限り…

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画伯デビュー日記「ひなたのにおひ」

<画伯への道・三日目>  レイヤーの存在を知る。  なるほどこれこそリアルの絵描きとの違い。しかし、どの場面で仮想空間を使うかがわからない。特に白黒のマス目の意味が不明。なぜごしごし消しゴムツールで描いた絵を消すと、マス目が出てくるのかがわからん?  「温かいお布団」のイメージをどう出そうかと悩んだ挙句、布団をめくるとお日様がへれっ、と笑っている事にしたのはしたが、この「眼と口」らしき物体に…

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画伯デビュー日記「しょんべん犬」

「しょんべん犬」 <画伯デビュー日記・二日目>  ペンの種類が色々ある事を発見。  しかしどれも大した書き味ではなく小生不満。描き具合悪し。  やはりただはただ。高い金を出しお絵かきソフトを購入せねば画伯にはなれぬか?  しようがないので、ぶっとい筆(リアルではない、お絵かきソフトの架空の筆)で描いて要らない所を削ってみる作戦に挑戦。 作戦は成功し、犬の貧相さが予想をはるかに上回るほどに…

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「いないいないばー」

   どうやら僕は死んじゃうみたいだ。  でも、これでやっと父さんに会えるかな。  僕が赤ちゃんの時に死んじゃった父さん。  とても僕を可愛がっていたと、みんなが言う。  いつも『いないいないばー』をしてくれて、僕はキャッキャッと笑っていたと言う。  やっと会えるんだな、父さんに……。 ―――― 「あのう、神さま、父は?」 「見かけませんね」 「あのう、閻魔さま、父は?」 「知らぬ!」 …

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「たまってばこ」

「神様、これがさっきあんたが言ってた『たまってばこ』かい。まあそれにしても古いしボロいし汚いし……。それに、ええっ何だいこの量!これ全部捨てろって言っても、オレ一人で作業するなら一生かかる、いや、十生、いやいや百生でも(笑)捨てきれねぇよ(笑)」 「……」 「で、中身は何だい?このたまってばこっていうヤツの中身?」 「うむ、それはな、お前たち人間の心からどんどん溢れてくる……とても大切な……」…

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「蚊の恩返し」

 ふらふらと蚊が落ちてきて言うには「ああ、お腹が減って、もうらめら」  しょうがないなと二の腕を出して吸わせてやると、まあこいつ、吸うわ吸うわ。  どこまで腹が減っていたのか。  そしてみるみるほっぺたを真っ赤にして「ふわー、余は満足いたしたぞ」と飛んでいくのはいいのだが、今度は体の重さで酔っぱらいの様にふらふらで、僕はこいつを見ていて生意気な態度も相まって、いつもの癖で「えいや」と両手のひ…

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「空気清浄期」

「地球に害のあるものを、全て除去する空気清浄機を発明したぞ!」と博士。 「では、スイッチ・オン」  ……  すると  人間  消えた。  博士  一人  残して  まわりの  人間  みんな  消えた。 「はて、こんなはずじゃなかったのに」  ……  そう言いながら博士『ポン』と飛んで行った先は  ジャングルで  博士の  目の前で 「うわっ!真っ最中」  アダムとイブがセッ●ス真っ最…

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「靴の石ころ」

   靴の中に石ころが入っていた。  一歩、歩いて地面を踏むと、足の右側で、ぎゅっ。  また少し歩いていると、今度は前のほうで、ぎゅっ。  てくてくてくてく歩くたびに、石ころはあちこち移動する。  あはは、まるでランダム足つぼマッサージだ。  次はどこに転がるかなあ。  いつものバス停に着いたけど、今朝はもう少し歩きましょ。 <おまけ>  ばたばた仕事を終えて、帰り道。  石ころがなくなって…

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「ひなたのにおひ」

「ねえねえ天気予報、はずれないよね」 「久しぶりなんだから」 「ほらほらさっさと起きてよ」 「るんるんるんるん」 「家帰ったら早く寝てね」  うちの奥さん、朝からうるさい。 ――――――  そして夜……。  仕事から帰って、ばったんきゅうとお布団にもぐりこんだら  あらあら  くんくん  あら  くんくん  ひなたのにおいのお布団だ。  ……ああ、そうか、そういうことだったのか。…

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「人は我慢で出来ている」

 しょんべんしている犬を、ぼーと見ながら考えた。 「人は我慢で出来ている」  おしっこ、我慢  うんこも、我慢  怒るも、我慢  泣くも、我慢  笑うも、我慢  じっと、我慢  静かに我慢  泣いてみたい、笑ってみたい、殴ってみたい、怒鳴ってみたい、見てみたい、飛んでみたい、いい人でいるのはもうやめたい、内緒をやめたい……。  それは我慢、今は我慢、そこは我慢、そして我慢  一…

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<画伯デビュー日記・第一日目(9月27日)>「おばちゃん」

<画伯デビュー日記・第一日目(9月27日)>   アマゾンで購入(税込み安売り期間中で3,220円)したペンタブレットが届きついに本日、処女作公開。  題「おばちゃん」  付属のボールペン状のもので黒い板をこするとパソコン画面にグニャグニャと太いミミズや細いミミズやカラフルなミミズ。  とりあえず、人間を描いてみようとミミズをグニャグニャ絡ませること約2時間、何やら暴れる化け物の祈祷をし…

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「おばちゃんと僕と神戸は新開地」

   僕の仕事場は、神戸の新開地と言う所。  どんな所かと言うと、まあ、簡単に言うと神戸で最も下町。  そんな関西の下町ならではの、こんな一コマ。  ――――  公園前の信号を待っていると、  いきなり後ろから肩をたたかれて、 「急に寒なったなあ」  振り返ると、見知らぬおばちゃん。  おばちゃんが言う。 「風邪に気ぃつけや」 「は、はい」 (おばちゃん、通り過ぎる)  と、また、肩とんとん…

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「エレベーター鼻くそ」

 あなたは、誰もいないエレベーターに乗ったら、ついつい鼻くそ、ほじってしまいませんか?    そんな時に限って、人が乗ってきたりしませんか?  あなたは慌てず騒がず、鼻をこする振りをしてごまかしませんか?  そして、ほじっていた右手を背中に回して、こっそりゆっくり鼻くそ、丸めたりしませんか?  その、乗ってきた人が、なんともかわいい女性なのですが、  書類を山ほど抱えておりまして、  降り…

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「初恋鼻くそ」

   あなたは、あの頃、近所の土手に寝そべって、鼻くそをほじくっていませんでしたか?  そう、土手で鼻くそ。  そんなときに限って、あなたの好きなクラスメイトのさっちゃんが、駆け寄ってきませんでしたか?  あなたは慌てて、鼻くそをその辺の葉っぱにこすり付けたりしませんでしたか?  さっちゃんは、息を切らせてあなたの横に寝そべって、頬っぺたを真っ赤にして 「おら、おら、前がら、おめのこと好きだ」…