さんが書いた連載シニアの日記一覧

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「70代は立派な高齢者です」

お風呂に入る時、娘が脱衣所まで暖房してくれていた。浴槽の蓋も外してあり、かなり暖かい。 ヒートショックについて調べた。 「暖かい居室から、気温の低い脱衣所・浴室内に入ることで、血圧が上がります。その後、温かいお湯に入ることで更に血圧が上がり、しばらくお湯につかっていると下がります。 お湯から出るときは、水圧がかからなくなることで血圧が下がります。 また、入浴後の温まった体で、寒い脱衣…

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「幼子といると」

「空の青が濃いですね。雲一つない」 「いや、あそこに出てますよ、地震雲」 そう言って男性は東の空を指差した。家々の屋根付近に低く雲が棚引いている。 今までの男性の雰囲気からは意外な気がしたが、それだけ能登の大地震が気掛かりなのだろう。深追いしなかった。 「○○ちゃん、保育園まで走ろう」 「うん」 「行ってきます」 「いってらっしゃい」 今年始めての土曜日。ママ…

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「居場所」

前方の空がどんよりと曇っている。その光景が妙に残った。 こんな風に思ったのは始めてだ。空は青く澄んでいたり、夕焼けだったり、雲の形が綺麗な時に残る。 故郷新潟の冬はずっとこんな空が続き、青空など見る事はなかった。 高校を卒業して東京に出て来て初めての冬、私はこの青空にやられた。もう新潟には帰らない。 冬の間毎日続く東京の青空を見て、裏日本は損をしていると思った。 秋がないだけでなく、冬…

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「いつの間にか咳が治っている」

外に出ると空気が美味しい。今年は寒さが嬉しい。 友人に塗り絵の葉書を書く。一番いい出来のカタクリの絵だ。もう一人には鶏頭の塗り絵。葉書大の塗り絵はこうして使えるからいい。 さて年末。ちょっとはやった気になりたいが、その前に、娘宅からの帰りに買ったゼンマイと笹の子を片付けよう。 先ずは大根を圧力鍋で煮て、別の鍋にゼンマイ、笹の子、コンニャクも入れて田舎風お煮しめ。これに新潟の丸い…

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「市役所から真っ赤な封筒が来た」

「今日は14日、赤穂浪士の討ち入りですよ。テレビで見ると雪が降ってたんですよね。暖かいですね、今年は」 「今の若い人は信じられないでしょうね。自分の命を捨ててまで仇討ちをするなんて」 A子さんは自分で塗り絵を持って来てやっていた。大の仲良しだったB子さんの事に触れずに暫く話をした。 席も向かい合いで、毎日一緒にお喋りしていたB子さんがいなくなったのに、A子さんはその事に全く触れない…

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「恵みの雨」

小雨だ。地面は濡れている。全く咳が出ない。鼻水も出ない。 リビングの気温は15:3℃、湿度は75%。 テレビは寒暖差アレルギーの患者が多いと言っている。咳が完治していないのに、水のような鼻水とくしゃみが出た事があり、花粉症かと思ったが、2日間で終わった。その後はくしゃみは治まり鼻水が変化し喉の痛みが加わった。 昨日は帰宅すると「運転免許更新のための講習のお知らせ」が入っていた。…

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「薬がない」

「外に出て電話して下さい」 かかりつけ医の受付で咳があると言うと、そう言われた。玄関前に出る。 「咳はいつから出ますか?」 「もう一ヶ月以上前からです。他の症状はありません」 「じゃ、入って下さい」 かかりつけ医の午後の診察に行った。一度は治ったと思った咳がまたぶり返した。熱も鼻水もなく喉も痛くないが、時々発作のように咳が出る。今までに経験した事のない咳だ。 息子に「病院…

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「掛かって来い!」

玄関前に一鉢持って来た。途端に辺りが生き生きした。 リコリスだ。葉が美しい。緑色に青が混じり、形もスッと伸びやかだ。 これからの時期は危険な時期。日が短くなり、寒くなり、一年が終わる。諸行無常、命の儚さ、虚無感というブラックホールが待ち受けている。 なんぞと大袈裟に言う前に、誰だって日が短くなる時期には沈んだ気分になりがち。 迎え撃つ準備は思い付く限りやる。既に芽を出した…

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「自分を喜ばせる」

とはいえ、娘宅からの帰り、真っ直ぐ家に帰れない事がある。 寄るのはホームセンター。前回はパンジーの苗を買った。晩秋から翌年のゴールデンウィークまで咲き続ける有り難い花だが、苗を植えたり片付けたりが面倒になり、数年前から買わなくなっていた。 やっぱりパンジーだ。冬が賑やかになる。石楠花だって買う。もう鉢は増やさないと決めていたが、今からこんなに大きく力強い蕾を付けているのだ。リビングか…

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「デクノボウ」

私は3箇所で同じ事をしている、と時々笑う。職場と娘宅と自宅で。   職場で爺様婆様に薬を飲ませる時、ダブルチェック、いや、トリプルチェックをする。先ず薬箱から取り出して、一人の同僚に薬の袋に印刷されている「名前、日付け、○食後」を読み上げる、同僚も声に出して読み上げる。 次は飲ませる爺様婆様に薬の袋を見せながら同じように読み上げてから飲ませる。飲み込んだ事を口を開けて確認する。 …

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「新しい言葉」

「あら、おはよう」 「おはようございます」 玄関先を掃いているご近所さんと挨拶。 「これから保育園?」 「○✕△行く」 弟クンはいつも保育園の名前を言う。それが保育園だと分かっている。 歩き出してから私に言う。 「すれ違う」 3歳の弟クンが一つ一つ言葉を獲得していく様は、いつも新鮮だ。 何かが弟クンの胸に届き、その言葉を繰り返し遣う。的確に。 「○○ちゃん…

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「今時の子育て事情」

夜また弟クンが熱を出したと連絡があり、明日来れないかと娘が言う。 娘の朝は早い。5時にアラームをかけたのに気付かず目覚めたのは5時20分。眉だけ引いて、上も下も着れるだけ着てバイクに乗った。娘が出勤する前に会いたい。 近所の家の前にうずくまっている男性がいる。スーツ着て床を掃除している。まだ6時前だ。 新しく引っ越して来た若い家族で、新築中からよく男性は訪れていた。専業主婦らし…

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「色鉛筆じゃありませんよ」

「これ、色鉛筆じゃありませんよ」 「えっ?!」 「このタッチ。色鉛筆じゃ出せませんよ」 「•••」 「水彩色鉛筆ですね」 「何それ」 私はiPadで絵を描いている若い同僚に、家で描いた塗り絵を見せた。色を重ねると「濃く」ならずに「薄く」なるのだ。 「それ、何処で買うの?」 「ネット」 早速調べた。 「高い!」 「安いのもありますよ」 下にスクロ…

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「雨の日曜日」

あっ、またあった。何だ、咲いていたのか。 娘の住まいでキンモクセイが咲いているのに気付き、随分早いと思ったが、私が気付かなかっただけで私の住む街にも咲いていたのだ。 私は孫が「いい匂いがする」と言った時、ちょっとしたショックを受けていた。嗅覚も年老いるのか、と。 確かに嗅覚も衰えるだろうが、今回は私に全く余裕がなかったからだ。あの時に似ている。 癌が見つかった夏、蝉の鳴き…

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「何かを手放した方がいい」

体が重い、起きたくないと思った。 孫と一緒の娘宅での暮らしは楽しいとばかり思っていたが、自分で気付かない疲れが溜まっているのだろう。 頑張るな。自分の健康が一番だ。120%は止め、100%でいい、いや80%。今まで120%出せと自分に言って来た事自体、大袈裟過ぎる。 夜勤明けの20代の娘は相変わらず不機嫌だが、こうしてこの仕事を続けて行くのだろう。私は私の仕事を淡々とするだけだ…

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「愛情補給」

なんて平和で静かな一日なんだろう。家の中に大きな声が聞こえない。 お兄ちゃんが熱で寝ているし、ママも一緒に寝ている。バアバもほぼ寝ていた。一度は36℃台に戻ったが、また37℃を越えていた。 元気な弟クンはパパが外遊びに連れ出してくれた。 「バアバもお粥でいい?」 刺さるなあ、娘の言葉。こんな言葉を掛けてもらったのはいつ以来だろう。 病気って体が辛いのは困るが、37℃台の…

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「『最強のバアバ』なんていない」

朝起きると熱が下がっているのが分かる。36:9℃。私にしては高目だ。 昨夜は6時半くらいに布団に入った。枕元にはお茶のペットボトルを置き、目が覚めると飲んだ。トイレは4~5回起きた。 そんな事が功を奏したかどうかは全く分からないが、高熱にもならないし、咳一つ出ない。 息子から那須岳に行ったとラインが入り、4人亡くなっているという驚くべきニュースを教えてくれた。 あんな初心…

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「最強のバアバたれ」

まるでジェットコースター並みの落差だ。 昼間は乳癌検査でバンザイを叫んだのに、娘宅に来たら弟クンが保育園を早退していた。左目が充血し腫れている。迎えに行ったのはパパだが、ママまでいて横になっている。具合悪くて会社を早退したと言う。 夕方弟クンはパパが病院に連れて行き、アデノウイルスとのこと。コロナでもインフルエンザでもなく、アデノウイルス!次から次に子供に襲い掛かるウィルス。感染力が…

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「『今度生まれたら』」

私は娘宅から帰り、○○公園に急いだ。ボランティアの活動開始は10時。直前に着いた。今日はバラの剪定と草取り。風は涼しいがやはり汗が流れる。園内には小さな子供達が続々と入って来る。 周りのお喋りを聞きながら私も貸与された剪定鋏でバラを剪定し、地面の草取りをする。 「柔らかい土ですねぇ。やっぱり花は土なんですね」 「そうだ、土だ」 近くにいた男性が答えた。いいなあ、この「話が通じる」…

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「来年は特別な年」

ここだ、ここに行ったのだ。 録画でNHKBSの『スイス絶景!アルプス·鉄道の旅』(9月15日放送)を見た。 息子がまだ小学生だった30年前、友人とそれぞれ長男を連れてヨーロッパ旅行に行った。ドイツからスイスに入り、ユングフラウヨッホに行った。岩肌の美しさが強烈に残った。 「スイスの、名峰が次々姿を表す」 「先ずヴェッターホルン3702m」 「アイガー3970m、右側は多くの…