さんが書いた連載二人旅の日記一覧

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「孫は何度も振り返った」:伊豆①

じっとしていると寒い。足ぷみした。ホームを電車が通過するとアナウンスがあった。猛スピードの成田エクスプレス『ネックス』が直ぐ近くを通り過ぎた。東京と千葉の違いはこれだ。ホームにホームドアが無い。 案の定また寒くなった。仕事から一度帰宅し、上から下まで全部着替えるが、流石に真冬の格好は出来無い。土曜日は雨で寒いが、日曜日は晴れてまた20度越えになるかもしれない。 着膨れしないよう下…

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「今年初めてのお花見」

茶色い風景の中にピンク色が並んでいる。 「おお、まだまだ見れるね」 「さあ、こっからが問題だ。奥(の駐車場)も一杯だな」 手前の駐車場は初めから諦め、奥の駐車場を目指したが、やはり満車で空くのを待つ車が何台も停まっている。 ここも諦めて駐車場を出た。 「ロチュウしかないな」 数台停まっている田圃の脇に停めた、乾いた田んぼにはトラクターが動いている。土を耕しているのだろ…

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「贅沢な正月」

「富士山なら富士五湖だな」 「おお!いいねぇ」 九十九里で太平洋の初日の出は諦めたが、富士山に上る初日の出を見た。テレビだ。ヘリコプターから撮影しているのだろうが、見事だった。 正月二日に千葉から富士五湖はキビシい。東京を突っ切らねばならぬ。 東京ディズニーランドの遥か手前からとんでもない渋滞にはまってしまった。事故らしい。止まったり少し動いたりを繰り返す。運転するには厄介な…

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「行列:2023元旦」

「来年は○○ちゃんもここで凧揚げ出来るね」 幕張の海に出掛けると、思いがけなく沢山の人が穏やかな元旦の海を楽しんでいた。 娘と一緒に来たお兄ちゃんが帰って行った。弟クンは熱を出し、パパとお留守番だった。 凧揚げをしているのが、真っ先に目に飛び込んで来た。皆三角形の飛行機の形だ。 「風もないのによく上がるねぇ」 「△△クラブで凧揚げしたなあ。ヒゴだっけ、竹の細いヤツ。あれ…

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「雨のお陰で絶景を見た」妙義山③

昨日の今日、5時起きで出勤はキツい。アラームを5時半に掛けて暫く布団の中にいた。 膝のお試しなんて言い訳。息子と出掛けたかっただけだ。 この年まで生きていれば、災難はある日突然降りかかると知っている。暑いとか寒いとか、ご飯が美味しいとか不味いとか、無数の小さな出来事で見ないようにしているだけだ。 今日の健康がずっと続く保証はない。そんな風に言うと深刻に聞こえるが、今ある健康を1…

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「何にも見えない」妙義山②

問題は膝じゃなかった。天気だ。 朝、カーテンを開けたら真っ白。妙義グリーンホテルは妙義山を見るためのホテルなのに(一般にはゴルフをするためです)、霧だか雲で目の前の妙義山どころか何一つ見えない。 天気がよくない事は分かっていたから準備は万端抜かりはない。部屋で半袖の上にウィンドブレーカーを着て、その上にレインスーツを着た。リュックには靴下からセーターまで着替えを入れ、カバーまで付けた…

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「ショッキングピンク」妙義山①

ショッキングピンクでいい。久し振りに10足程あるランニングシューズを眺めた。鏡には同色の防寒具に揃えたカッコイイ婆さんが写っている。顔は見るな。 大きなリュックは出勤する息子の車に積んだから、これもまたランニング用の胸と腰二箇所を固定するベルト付きの小さなリュックを背負った。 朝九時前の総武線快速は体が触れ合わない程度の込み具合で、私はドアの前に立った。皆静かにスマホを見ている。二箇…

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「介護度1だな」茶臼岳②

私は石碑の陰でウィンドブレーカーを脱いだ。リュックからセーターを出して着た。その上にまたウィンドブレーカーを着、更に防水のしっかりしたレインスーツを着込んだ。 下に穿くズボンは、一度登山靴を脱がないと穿けないだろうと思ったら、先に穿いている息子が裾のファスナーを上げながら言う。 「靴を脱がなくても穿けるよ」 私のズボンも同じ造りだ。登山靴の上から穿こうとした。すると二重構造になって…

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「持続可能か?」茶臼岳①

「まだ早いね。例年10月の3、4、5に来れば間違いないんだけどね」 登山支度をした男性が笑顔で私達に話し掛けて通り過ぎた。私は山にスマホを向けていた。 山から降りてきた女性達が新しく出来たトイレの建物の中で賑やかに話している。 「賑やかだね」 「帰りの会をやってるんだ」 私達は車中で千葉ロッテマリーンズの「帰りの会」を聞いていた。選手の名前を連呼するだけの歌を歌い拍手する。…

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「杓子が戻っている」成田山新勝寺

水を掬い両手を洗い口を漱ぐ。久しぶりだ。コロナの間手水舎は閉鎖されていたが、神様仏様に礼を失していた気がする。 急な階段はいつもキツイのに、今日はそれ程でもない。2年半ぶりに朝運動したからだろうか。 朝6時過ぎにマンションの周回コースに行った。早足で歩き始めたが、直ぐに走ってみたくなった。ゆっくりゆっくり。早足より遅いくらいだ。 初めは足全体が悲鳴を上げているように、足の付…

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「仕上げは美容院」

筋肉痛は起きなかった。それ程酷使していないからだろう。 涼しい。朝9時前にイオンに行く。お刺身系とお肉に興味関心ゼロ。とにかく果物と牛乳だ。梨に牛乳二本を入れたら重いなぁと弱気になる。冷凍サンマか。台湾産。食べられそうだ。 小さなカツサンドも食べたい。なんだ、食欲復活している。単に食べたい物が変化しただけなのかもしれない。 異常に汗が出る。帰宅してシャワー。 午後になり美…

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「アイスクリームよりガリガリ君」

今日は一日外には出なかった。この暑さは危険だ。 昨日夜帰宅して玄関を開けた時驚いた。熱の塊が襲って来たのだ。夜8時過ぎに。私が山にいた間、どれ程暑かったのだろう。 私は山で確かに元気になった。だが、山以外にも私を元気にしたものがあった。 チャリダーだ。 国師岳から下山して来たら、駐車場の端に2台の自転車が立て掛けてあった。まさかとは思うが、ここまで自転車で来て、山に登っているのだ。 山…

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「年齢って何だろうと時々思う」国師ヶ岳

「やっぱりそうなりますよね」 上から降りてきた男性が声を掛けて来た。私は顔を上げられないが、声の感じでは同世代か。私は急な階段を両手も使い、四つん這いで登っていた。 上から目線がちょっと悔しい。 「昨日、大菩薩嶺に登ったんです。」 少しは称賛の言葉を掛けて来るかと思いきや、男性は言った。 「僕は今日○○に登ったんです」 二日連続登山より一日でニ山。男性は降りていき、後から来ていた夫婦連れら…

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「鹿と富士山」大菩薩嶺

「鹿だ!」 鹿?何を言っているのだ。バテて来た私を息子は励ましているのだ。 「鹿だよ!ほら、後ろ!」 振り向いた。直ぐそこに大きな鹿がいるではないか。野生の鹿だ。スマホを向けた。逃げようとしない。そのままゆっくりと歩いている。 背景にはマウントFujiが青空に映え、手前にはダム湖が横たわる。 最初に富士山を見た時は感動感動。そのうえ野生の鹿。私だけが写真に納めたと思っているから舞い上がり、…

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「奇跡は起きる」谷川岳④53:3

「早目早目に行動した方がいいですよ。午後は雷が来ますから」 「はい」 「耳をすませてください。雷の音が遠くに聞こえます」 「はい」 私達の後にロープウェイに乗り込んで来たのは、1メートル近くもある荷物を担いだ歩荷(ボッカ)さんのような人。荷物を下ろして椅子に座ると、直ぐに私達に話し掛けて来た。乗客は3人だけだった。 「ほら、あそこに見えている一番高い所、あれがちょうど半分くらいです」 彼…

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「晴れた」谷川岳③

晴れた!晴れました。 朝5時過ぎに温泉に行くと既に10人程もいる。皆露天風呂にいて外側を見ている。昨日阪急交通社のバスがホテル前に停まっていた。 青空に刷毛ではいたような白い雲。 部屋の窓からは直ぐそこに綿菓子が千切れたような雲が浮かぶ。上越線水上駅には電車が停まっている。 手前を黒い煙を吐きながらSLが走る。先頭車両だけだ。水上と高崎間を週一で走るらしい。 谷川岳は雨で滑りやすいはず…

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「谷川や 土砂降りの雨に 迎えられ」54:0谷川岳②

直ぐに止むと思った。ナンセ土砂降りだ。それも、バケツをひっくり返したよう。 こんな雨に対抗出来るのはあの「タイムトンネル」のある土合駅しかない。舗装していない駅前はそのままで車体の底を擦りそうだ。 車から駅舎まではほんの数メートル。傘を差さずに走ったが、かなり濡れてしまった。エアコンは必要ない涼しさ。直ぐに寒さが来た。 無人の駅舎には数人の観光客。改札はフリーパス。下り線に向かう。暗くて一…

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「二人目の見覚えのある背中」谷川岳①

娘宅からの帰り、家の近くでいつものルートとは違う道を選んだ。そこは舗装されていない所がありバイクでは厄介だが、畑や田圃の緑が間近に感じられ爽快なのだ。 大きな凸凹を避け慎重にハンドルを握っていた。前に自転車が見えた。ママチャリではなく、細身のカッコいいやつだ。ヘルメットを被っている。 もしかして?え?まさか!大きな声で呼び掛けた。 「もしかして!」 イヤフォンをしている。大声で叫んだ。 「も…

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「都民も始まるよー!」

1万円超のホテルに5000円引きで泊まり、夕食朝食付きで温泉三昧。お土産は二人分の地域クーポン券4000円を頂き、土産はそれを使い切ると言う申し訳ないような制度。 「誰のお金を使ってるの?」 「 県民割は、観光支援策「Go To トラベル」の代替策として昨年4月に導入された。政府が、県民割を実施する都道府県に対し、旅行者1人当たり1日最大7000円分を補助している。昨年11月に隣接県からの…

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「山をナメるな」谷川岳③

「バスは?」 「乗らないよ」 息子はロープウェイ乗り場にも、一ノ倉沢に行く500円バスが停まる場所にも向かわず、さっさと歩いて登って行く。 4時過ぎに目覚めた時も、廊下を歩いている時も、ずっと土砂降りの音が聞こえていた。 ところが、大浴場に向かうと、外の雨は上がっていた。だが、相変わらず轟音はしている。川の音だ! ホテル『水上館』は川のほとりにあり、川の音が大きく響…